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Friday, 12 April 2013

筆を左手に持つ?

草森紳一の「李賀 垂翅の客」を買つた。
web検索をするうちにたまたまこの本の出版を知り、心待ちにして、発売日と云はれてゐた日にいさんで丸の内の丸善に行き、それまでさんざん萬年筆などを買ふてためにためたポイントをお買物券と交換して、入手した。

化粧箱つきの本を買ふなんて、思つてもみなかつたなあ。
最後に買つたのつて、もしかしたら「虚構船団」かもしれない。「虚構船団」は、絶対文庫化されないといふ話を聞いて買つたのだつた。ちなみに上記リンク先にあるのは文庫版である。

「李賀」の中身は2段組みで、組版のおかげだらうか、とても読みやすい感じがする。
といふわけで、ぺらぺらめくつて読んでしまつたりするのだが、なんだかもつたいなくてなかなか読み進めない、といふのが現状である。

ところで、「李賀」にさきだつて、おなじ著者の「随筆 本が崩れる」を読んでゐた。
この本によると草森紳一はたいへんに筆圧が高かつたのださうである。
力を入れると「火のつくように思考が動き出す」のを感じたのださうだ。
筆圧については、こちらにちよこつと書いてみたが。
ここにはもうひとつ気になることが書かれてゐる。

筆圧の高いためか、草森紳一は手や腕の痛みに悩まされてゐたといふ。
それで、筆で原稿を書くやうになつたのださうだ。
なるほど、筆なら筆圧は必要ない。むしろムダに力が入つてゐた方が書きにくからう。

草森紳一は、平田篤胤についていろいろ調べてゐたらしく、どうやらこの篤胤も、「書痙」、すなはち腱鞘炎だつた、といふ。
篤胤の使つてゐた机には、左肘をかばふやうな仕掛けがほどこされてゐたのだ、とか。

そこで、草森紳一は、「篤胤は左利きだつたのではないか」といふ。
腱鞘炎になるとしたら、筆を握る利き手の方だらう、と。

うーん、さういふことつてあるのかなぁ。

童の心で―歌舞伎と脳科学」の中で、團十郎はもともとは左利きだつたといつてゐる。團十郎がこどもの時代はきびしく右利きに矯正されたもので、絵を描いたりなんだりする以外は右手を使つてゐたのださうだ。

その中で、ひとつおもしろいことを云つてゐる。
子役のときに「寺子屋」の菅秀才をやつてゐるうちに、筆は右手で持つやうになつた、といふのだ。
菅秀才は、菅原道真の嫡子で、「寺子屋」の中では藤原時平の目をあざむくために、寺子屋の師匠夫婦の息子になつて暮らしてゐる。
「寺子屋」の冒頭部分に、菅秀才をはじめとする寺子たちが字を習ふ場面が出てくる。
そこで毎日筆を手にとるうちに、筆を使ふときは右手になるやうになつた、といふのだ。

あくまでも想像だが、篤胤も寺子屋に行つたらう。
寺子屋でなくて、もつとちやんとした学問所のやうなところに通つたかもしれない。
さうしたら、筆は右に持つやう指導されたのぢやあるまいか。
お手本は必ず左に置くだらうし、さすれば硯は右だらう。

それに、筆を左手に持つて書くのつて、書きづらくないかなあ。
左手で書いた方が、右から左に書くので、左手で書いた方が手は汚れないかもしれないし、書いた字の乾くまへに墨をこすつてしまふなんてなこともないのかもしれないが。
でも、とめとかはねとか、左手で書いたら、なんだかちがふ感じになつてしまふのではあるまいか。

でも、さうか、左手で書いた方が手が汚れないのか。
だとしたら、自己流で字を習ふてゐたら、もともと左利きだつた場合は左手で筆を持つやうになるのかもしれない。
硯は左に手本は右に置く。
最初からさうやつて書いてゐたら、左手で筆を持つやうになつてゐた可能性はあるのかも。

やつがれがこどものころも、左利きのこどもへの右利きへの矯正はかなり厳しかつた。
クラス一の秀才で普段は教師から全幅の信頼をおかれてゐたやうな子でも、左手で鉛筆をにぎつてゐると、教師から肘をはたかれたりしてゐた。

かういふ矯正をするやうになつたのつて、いつからなのかなあ。
寺子屋ではさういふ指導をしてゐたのだらうか。
明治時代に入つてからか。
案外、戦後からなのかもしれないなあ。

草森紳一は、自分は右利きで、左腕も痛くなつてゐるから、利き手と反対の手が痛くなることもあるだらう、とも書いてゐる。
さういふこともあるのか。
そこんとこ、筆圧の低いやつがれにはちよつと窺ひしれないところがある。

なんだか、悔しい。

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Comments

ほかはともかく、毛筆だけは左で書くよう指導した、という例も聞きます。やはり、文字を書くのは右手のほうが向いている気がします。

左利きだけど書道のときだけは右手で筆を持つ、という話は聞きますね。
左手だと筆では書きづらいだろうな、と思うんですけど、実際はどうなんでしょうね。

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