名前・名前・名前
以前、演奏会でブラームスの交響曲第四番にファゴットのセカンドで乗ることになつたことがある。
友人に演奏会に来てね、と頼んだとき、「名前はないの」と訊かれた。
「名前?」と問ふと、「運命」とか「悲愴」とか、さういふ別称はないのか、といふことだつた。
ない、と答へると、「つまらない」と云はれた。
さ、さういふものなのかあ。
といふやりとりを、LisbethとかAerlitのシャトルとか見てゐて思ひ出した。
ブラームスの四番は、別称などなくとも、名曲である。
「つまらない」と云はれて、納得がいかなかつた。
たとへば、チャイコフスキーには六つの交響曲がある。
第一番が「冬の日の幻想」、第二番が「小ロシア」、第三番が「ポーランド」といふ。
しかし、いづれもとくに名称のない第四番や第五番ほど知られてはゐない。
とはいへ、チャイコフスキーの交響曲で一番有名なのは第六番の「悲愴」だらうけれどもさ。
Lisbethの糸の人気のあるのは、使ひやすく色が豊富だからだとは思ふけど、色によつて名前がついてゐるからなんぢやないか。
以前から、さう思ふてゐた。
この前なにを血迷つたか四巻も買ふてしまつた桃色と茶色の段染め名は、Pink Cocoa。
もしさういふ名前がなくて、色番だけだつたとしたらどうだらう。
あのブラームスの四番を「つまらない」呼ばはりした友人とおなじやうに、やつがれもまた、「つまらん」ときめつける。
そんな気がする。
Aerlitのシャトルもさうだ。
名前をつけたのは便宜をはかつたため、とも考へられるが、MintにLavenderをあはせる、とか考へるだけで、ちよつと楽しい。
名前つて重要なんだよなぁ。
だからといつて、なんにでも小説の題名とかつけちやふのはどーよ、といふ話も、ないわけではない。
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