一度編み出すととまらないのがくつ下である。
といふのは、まあ、やつがれ個人の事情なのだけれども、そんなわけで、先々週もくつ下を編んでゐた。
まづ最初に毛糸を決めた。
Austermann StepのCol.148。茶色と緑の段染めくつ下毛糸である。
これに合ふくつ下、と、いろいろ悩んで決めたのが、Mojoだ。
できあがつたのがこれ。
どちらも同じくつ下である。普通の状態と伸ばした状態。
かういふのが楽しいんだよねえ。
Mojoは以前から編みたいと思つてゐた。
左右非対称、すなはちアシンメトリカルなデザインがいいし、なにより「mojo」といふ名前がいい。
例によつて英辞郎でははかばかしい訳語が出てこないが、敢て訳すなら「中毒」もつといふと「麻薬中毒」だらう。
ときおり、「My knitting mojo is back!」なんぞといふ表現を見かけるが、まあ、そんなやうな意味だ。
今のやつがれの場合は、「My sock-knitting mojo is back!」といつたところだらう。
なにが楽しいといつて、DPNすなはち四本針とか五本針でちまちまちまちま輪つかに編んでいくのがたまらなく楽しい。
「さうだよ、これが好きだつたんだよ」といふ感じ。
やつがれは決して速編みではないのだが、一本の針にかかつてゐる目数が多分ちやうどいいんだらう、くつ下編みだとなんだか気持ちよく編み進めることができる。
などと書きながら、Mojoにはかなり苦戦をした。
まづ何に苦戦したかといふと、裏メリヤス編みだ。
おそらく、糸を右手にかけて編む人にはわかりづらいことなのだらうとは思ふが、左手に糸をかけて編む場合、(表)メリヤス編みと裏メリヤス編みの手の動きはかなりことなる。手の動きがことなるといふことは、テンションなども変はつてくるわけで、これを同じやうにするといふのが實にむづかしい。
むづかしいと思ふのは、「自分は不器用ですから」だからなのかもしれない。
世の編み人・ニッターは、「そんなのあたりまへぢやない」といふ感じでかんたんにこなしてしまふことなのかもしれない。
残念ながら、やつがれはさうではないのだつた。
裏メリヤス編みにはこれまでもいろいろ苦労してきた。
編み方を変へてみたりね。
結局、たたさんとたた夫さんのフランス式裏編み徹底図解に戻つていくのだけれども、ついつい左手の人差し指を動かしてしまつて腱鞘炎になりかけることもしばしば。
……精進せねば。
くつ下毛糸にはちよつとすべりやすい糸があつて、今回の毛糸がまさにそれで、そのせゐで裏メリヤス編みが編みづらかつた、といふのもあると思ふ。
もうひとつ苦戦したのが、Afterthought Heelだ。
Afterthought Heelでは、かかとは後から編む。
通常は履き口から編むにしてもつま先から編むにしても、かかとは編み進みながら仕上げていくのだが、今回はかかとを編む部分を別糸で編んでおいて、あとからその糸をほどいてかかとを編む方法をとつた。といふか、編み方にさうしろと書いてあつた。
Afterthought Heelのいい点は、のちのちかかとの補修がやりやすいことだらう。
あとから編み足してゐるので、編み進みながら編んだかかとよりもほどいて編みなほすのが容易だらうと思はれる。
かかとはくつ下の中でも補修の多いところだから、これは重要な点だ。
また、あとから編み足すので、「はっ、毛糸が足りない!」といふときに、かかとだけ別の毛糸で編むかも可能。
そんなにいいもののはずなのに、なにに苦労したのかといふと、仮に編んでおいた別糸をほどいてその部分の目を拾ふのに異様に四苦八苦したのである。
最初のかかとにはそれだけで30分くらゐかかつたんぢやあるまいか。それは大げさか。
あとで目を拾ふことを考へて、若干太めの糸で編んでおいたのにもかかはらずこの体たらくだ。
もう二度とAfterthought Heelは使はん。
さう思ひもしたのだが。
でも、仕上がりは悪くないなあ。
最後はメリヤスはぎでしめくくるのだが、メリヤスはぎ、嫌ひぢやないしね。
バイアスになる編み地の場合は、Afterthought Heelもいいんぢやないかな。
Mojoはつま先からMagic Loop Cast-onで編み始める。
履き口が二目ゴム編みの方は二目ゴム編み止めしてみたが、ガーター編みの方はこの伏せ止めを使つてみた。伸縮性は抜群。
二目ゴム編み止めもメリヤスはぎと同じくらゐ久しぶりで、ちよつと手間取つてしまつた。
といふわけであらためて、なにもしない、くしやくしやした感じのmojoと、
ソックブロッカを履かせてみたmojo。
さて、次なるくつ下は何にするか。
ここのところずつと縄編みをしたくて仕方がない。縄編みのくつ下にするかなあ。
などと考へてゐたのに、今は「Brave New Knits」からLubov Scarfを編んでゐたりはするのだが。
それはまた別の話。
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