ひきこもり願望
ひきこもりたい。
ずつとさう思つてゐる。
世の中では、「ひきこもり」の問題といふのは、別段ひきこもりたくない人がひきこもりになつてゐることなのださうである。
ここにひとり、ひきこもりたいのにひきこもれない人間がゐる。
これもまた、ひきこもりの問題だらう。
ひきこもりとはまた少しちがふかもしれないが、世の中に「ニート」と呼ばれる人々がゐる。
森博嗣は「大学の話をしましょうか」で、「働いて社会に迷惑をかける人間よりは、働かずに社会に迷惑をかけない人間の方がありがたい」といふやうなことを書いてゐる。
これは、初版の帯にあつた文言だつたと記憶する。
ああ、自分は、社会に迷惑をかけてゐるんだなあ。
ひきこもれさへしたら、社会にも迷惑をかけずに済むものを。
とはいへ。
ニートの問題は、やはり社会にそれとなく迷惑をかけてゐることだらう。
ニートは労働の義務を果たしてゐない。すなはち納税の義務も果たしてゐない。しかして税金の幾ばくかはかうしたニートの人々のためにも使はれてゐる。そのはずである。
これは社会に迷惑をかけてゐることにならないのか。
それでも、実際に世の中に出て働いて、職場の人々や顧客に直接迷惑をかけるよりはましなのかもしれない。通勤途中にたまたまそばに居合せた人々に迷惑をかけるよりはずつとまし。
本人も気持ちとしては楽だらう。
ひきこもつてゐては稼いでいけないので、仕方なく日々外に出る。
社会に迷惑をかけてゐるのは百も承知。ゆゑにたちも悪い。
「労働は国民の義務だから」
「納税は国民の義務だから」
今日もさう云ひ聞かせて出勤する。
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