ミーハー嫌い
軽佻浮薄なことほど気に障るものはない。
こどものころは、いはゆる「ミーハー」を許せなかつた。
つい昨日まであるアイドルに夢中だつたはずなのに、今日は別の新人アイドルを追ひかけてゐる。
その「尻軽」な感じがどうにも我慢ならなかつた。
やつがれも年を取つた。
さう思ふのは、以前ほど「ミーハー」に対してイヤな気分を抱かなくなつたからだ。
「ミーハー」、いいぢやん。らくちんで。
なんにも考へなくていいし、世の中、そんな複雑に考へることないよね。
見下してゐる?
いや、断じてそんなことはない。
やつがれだつて「ミーハー」な行動をとるやうになつたのだから。
それはさておき。
中学生になつて英語の授業がはじまると、猫も杓子も英語を使ひたがるやうになる。
小学生の高学年くらゐからさういふ兆候はある。とくに、ローマ字を習つたあたりからだ。
このころはまだ、単に日本語をローマ字で書くくらゐの感じが多い。
それが、中学生になると、知つてゐる英語、さらには知らないけどなんとか調べてアヤシげな英語を書いたりするやうになる。
これがイヤでねー。
なにのイヤなことがある、と思ふ向きもあるかもしれない。
日本語だつてろくろくできないくせに、なにが英語だ、といふ気分も多分にあつた。
でもやつぱり、なんだか「軽佻浮薄」に見えたんだな。
昨日の紫式部ぢやないけれど、「さばかりさかしだちアルファベット書き散らし」と思つてゐたわけだ。
しかも、相手は清少納言ぢやないから、「まだいと足らぬこと多かり」どころか、もう箸にも棒にもひつかからないやうなのを書き散らしあそばす。
ああ、イヤだ。
あんなみつともないこと、絶対したくない。
心底さう思つてゐた。
ぢやあやつがれはどうしてゐたのか。
英語に対抗するに、漢字をもつてした。
ま、それしかないよね。
中学生のときの寄せ書きなどを見ると、ひとりで史記や漢詩からの引用を書いてゐるのがやつがれである。
といふか、やつがれしかそんなことをしてゐる生徒はゐない。
なので、見ればすぐわかる。
「さばかりさかしだち真名書き散らし」てゐたのは、ほかでもない、やつがれだつたのだ。
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