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Monday, 02 July 2012

ヒカリエや 兵どもが 夢の後

6月29日(金)、渋谷ヒカリエの川本喜八郎人形ギャラリーに行つてきた。
以前から、さういふ催しがあると聞いてはゐたが、もう展示期間は終はつてゐると思ひ込んでゐた。
常設で、時折人形を入れ替へるのらしい。

平日の昼間だといふのに、ヒカリエは「たいへんな人ですこと」といつた賑はひであつたが、人形ギャラリーは閑散とした感じで、「見放題」といつた趣。おかげで十分堪能できた。

飾られてゐるのは、平家物語の人形と三国志の人形。
平家物語の人形は人形劇で用ゐたものらしいが、三国志の人形は作りなほしたものらしい。そんなやうな記事をどこかで読んだ気がしたのだが、見つけられなかつた。

平家物語からは、家貞、泰子、青年期の清盛、忠盛、遠藤盛遠、袈裟、源渡、美福門院、鳥羽院、待賢門院、崇徳院、為義、義朝。

三国志からは、郭嘉、曹操、夏侯淵、李儒、王允、董卓、貂蝉、陳宮、呂布と赤兎、関羽、張飛、髭のある玄徳、趙雲、龐統、孔明、孫権、周瑜、魯粛。

メモを取つてきたわけではないので、もしかすると抜けとかあるかもしれないが、まあ、こんな感じ。

清盛が案外目立たないのが、大河ドラマを彷彿とさせる。大河ドラマの方はここ何回か、清盛は大変よくなつてきてるんだがね。人形の方もそのうち入れ替へがあるのだらうといふ気がする。
清盛と比べると義朝はかなり立派な感じ。戦闘モードだからかもしれない。
三国志より女の人が多いんだが、その分華やかといふわけでもないところもおもしろい。みな似たやうな装ひなんだけど、それぞれに全然印象がちがふのがいいね。
崇徳院の頭が一番よかつたな。如何にも幸薄さうといふかなんといふか。

三国志は董卓とかゐるあたり、初期の人形かといふと、玄徳に髭があるあたりさうでもないのだが、まあ、考へてみたら呉のあたりは赤壁の布陣なので、そんなこともないのかも。玄徳は髭なしも見たいぞ。

三国志で意外だつたのは曹操。
基本的に目玉の動く人形は目を左右上下どちらかに寄せてあつて、曹操は右を睨んで立つてゐた。左側や正面から見ると、狡さうな表情で策士とでも呼びたいやうな顔つきなのだが、右側から見るとこは如何に。流し目をしてゐるやうでなんとも素敵な男ぶりではないか。あれ、曹操つてこんなにいい男だつたかな、と、何度も左右を行つたり来たりしてしまつた。

曹操配下からは郭嘉と夏侯淵といふ選択がなんとなく不思議。趙雲や周瑜もさうなのだが、郭嘉も動いてるときの方がやうすがよかつたなあ。我が家では「孔明より郭嘉の方がかつこよかつたよねー」と云ふてゐたのだつた。

李儒もなぜだか印象に残る。眉が薄くて右を睨んだ酷薄さうな表情。いいねいいね。

貂蝉が、ねえ。きれいなんだけど、照明の加減か顔の凹凸が目立つのが残念。これは周瑜もさうだつたな。美形は大変だ。

陳宮の衣装はよくよく見るとなんだかアールヌーヴォといはうか、ちよつと洋風な感じでびつくりした。それであらためてほかの人形の衣装もしげしげと眺めてしまつた。王允の袖の三つうろことか、よくこんな細かい柄あつたなあ、とか、感心しきり。

呂布はなんだか若返つた印象。赤兎に乗つて、顎を上げて睥睨してゐるんだが、ちよつと暴走族のヘッドみたやうな感じでいつそかはいいとでも云ふか……

かはいいといへば、魯粛がかはいい。周瑜、といふよりは孔明か、に、無理無体を云はれて「えっっ」とでも云ひたいやうなポーズを取つてゐるのが、なんともいい。

関羽はそのうち赤兎と一緒に飾られることを願つてやまない。

張飛は上を見てゐる。それだけなのに、なんだかユーモラスで、如何にも張飛な感じが得なキャラクタだよなあ。

龐統は草を銜へてゐる。かつと目を見開いてゐて、「うーん、こんな感じだつたらうか」と思ふ。なんか、もつとこー、飄々とした感じではなかつたか。立ち姿はそんな感じなんだけど、間近で見ると見開いた目の印象が強い。

孔明は黒い薄もの羽織つて瓶覗とでも呼びたいやうな衣装の、仕官直後の装ひ。白羽扇ももちろん持つてゐる。ここだけなんだか佇まひがちがふぞ。

孫権も若い。もしかしたら玄徳に髭があるのは、孫権との年齢差をだしたかつたせゐではあるまいかと余計なことを考へるくらゐ、若々しく見える。

さういへば、周瑜の目は動いてなかつたな。やはり二枚目は正面きるのが正しいのか。いや、人形自体は動きのあるポーズを取つてゐたけれど。

まあ、そんな感じで、ところどころ抜けてるけど、立ち去りがたく、何度も何度も見てしまつた。

部屋の中央には人形のできるまでのパネルがあつたりする。

飯田にあるといふ川本喜八郎人形美術館にも行くか。

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