30回噛んでみた
「実際にやつてみた」の一。
30回噛むことはいいことだ、といふのは以前からいはれてゐることだ。
食べ物がやはらかくなつたせゐで、現代人はあまり咀嚼せずにものを食べるやうになつてゐる。
よろしくないことである。
少なくとも、やつがれがこどものころにはすでにさういはれてゐた。
わかつちやゐるけどやらずにきた。
やつてみることにしたのは、「やれ」「とにかくやれ」といふ本を読むやうになる前である。
四月このかた医者からいろいろいはれることがあつたり、そもそも寄る年波に勝てないといふ話もあつたりして、「健康によささうなことで、即できさうなことはとりあへずやつてみるか」と恩ふやうになつた。
30回噛むは、その「即できさうなこと」だつた。
やつてみてわかつたのは、まづ一度に口に入れる量が多すぎるといふことだ。
30回で噛みきれるのが適量なのだろうが、30回では噛みきれないことがしばしばあつた。
また、以前からそんな氣はしてゐたけれども、口の中が口の大きさにくらべてせまいんぢやないかといふ感じもする。
おはづかしい話だが、咀嚼するときの音が氣になることがある。
つめこみ過ぎが原因なのではあるまいか。
こればかりは自分ではわからないので、量を減らしたら音がしなくなるのかどうか確認のしやうはないのだが……
また、30回噛むことにすると、嫌いなものは食べられないことが判明した。
好きでもないものを30回も噛むだなんて、我慢できない。
さらに、30回噛むうちに、今までとくに嫌いとは思つてゐなかつたものが食べられなくなつた。
蒟蒻は、好きとは云はないが、別段食べられないといふこともない、ふつうの食べ物だつた。
口に入れて最初のうちはいい。
だが、何度か噛むうちに、「蒟蒻の味」としか云ひやうのない、苦手な味が、口の中にひろがるのだつた。
うーん、蒟蒻には30回ルールを適用しないことにするかなあ。
そんなわけで、いいことばかりでもないし、しよつ中30回噛むのを忘れる体たらくだ。
でもまあ、やつてみなければわからなかつたことだし、やつてみてよかつたのかなとは思つてゐる。
多分に云ひ訳じみてるけどな。
ところで、 30回噛むことの効用つて、なんなんだらう。
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