花見のこと
いはゆる一般に云ふ「花見」はしたことがない。
自分にとつての「花見」とはこんな感じだ。
近所にある桜のうち一番好きな桜を一番よく見えるところにござを敷く。ベンチや適当な石があつたらそこに座つてもいい。
つれだつて行く場合は少人数、二三人、せいぜい五六人といつたところか。
思ひ思ひにビールを飲み、あるいはワンカップでもいいかもしれない。
時折「きれいな桜だねえ」「きれいだねえ」などと呟き交はす。
そんな感じ。
いはゆる「花見」は花見ではないのではないか。
「花」のある必要がない。
「日本全国酒飲み音頭」にもあるけれど、単に酒を飲んでどんちやん騒ぎがしたいだけで、桜はあつてもなくてもいい。
桜はダシにされてゐるだけ。
そんな感じがする。
自粛がいいとは云はないが、これを機会にしづかに桜を愛でる人が増えたらいいのになあ、と、思つたりもする。
でもなー、もし、「しづかに花を見るのは自粛して、どんちやん騒ぎしてほしい」とか云はれたら、それはそれはイヤーな思ひをするだらうなあ、と考へると、やはり年に一回、桜の咲くこの時期には、あれをやらないわけにはいかないんだらう、と、しみじみ思ふのであつた。
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