「The Society of Mind」を読む その八
第八章には「記憶の理論」といふ題名がついてゐる。
まづ、知識ライン(Knowledge-line。略してK-line)といふ概念が出てくる。
英辞郎などには「知識ライン」と出てくるが、内容的には「知識の経路」といつた趣だらうか。
どのやうなものか、自転車修理にたとへた説明がある。
はじめて自転車を修理する時に、使用した工具にひとつひとつ赤い印をつけていく。次に自転車を修理する時は、赤い印のついてゐる工具を使へばいい、といふ具合。
さういふ具合に、過去に経験したことがら(agent)を結びつけるのがK-lineである。
はじめて問題Pを解いたときのK-lineは、普段は不活動状態にあるが、似たやうな問題Qに直面したとき、あるいは似たやうな問題Qに直面したと認識したときに、活性化する。ここで、問題Q用のK-lineが新たにできる。
過去に直面した問題と類似した問題に出くはした場合、過去の問題のK-line全体を現在の問題に紐づけるわけではない。類似の度合ひが強いものが紐づけられる。これをlevel-bands理論といふ。
たとへば、家を建てやうといふときに、こどものときの積み木で遊んだ経験が役に立つ。
役には立つが、すべての経験が役に立つわけではない。積み木を積み始めるとか積み木を追加するなんてなものはあまり役には立たない。必要なものを「見つける」とか必要なものを「入手する」とか必要なものを「置く」などといつた、中間レヴェルの作業(agent)は役に立つ。
K-lineの形状もまた、level-bands理論にしたがつてゐると仮定する。さうしないと、たいへん混乱した状態になるからである。
……ほかにもいろいろ書いてあるんだけど、まあ、おほよそこんなところだらうか。
K-lineといふのは、よく云はれるシナプスのやうなものだらうか。常にonの状態ではないが、なにか刺激があると電気が走つて記憶が蘇る、といつたやうな感じのことなんだらうと思つてゐる。
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