お名残歌舞伎座の二階桟敷席
三月大歌舞伎の第一部は、二階桟敷席から見た。
すでに書いたとほり、改築後の歌舞伎座にも二階桟敷を残してほしいと思つてゐる。だが、おそらく残らないだらうとも思つてゐる。
幕見席は残してほしいといふ聲も多からうと思はれるが、二階桟敷はそれほどでもないだらうと思ふからである。
そんなわけで、最後にもう一度といふ思ひから、東の袖の一番舞台寄りの席を取つた。
実は、歌舞伎座の東西の袖といふのは、それほど見やすい位置ではない。
南座のやうに客席が縦長の場合は、袖の方が後方の座席よりも見やすいことがある。
歌舞伎座は横長なので、袖に座ると舞台や花道が遠くなつてしまふ。また東側に座つてゐると、花道との間に広大な客席と多数の客がゐて、拍手でもおこらうものなら時にセリフがかききへてしまふこともある。
それでも、東の袖の若い番号なら、驚くほど舞台が近くなる。花道七三もほぼ真つ正面だ。「女暫」の巴御前が真つ正面に座つてゐるといふのは、なかなか悪くない。
こんな感じ。
また、花道での芝居は拍手に邪魔されることもあるが、たとへば「楼門五三桐」の大薩摩などはすぐ真下(でも二人ともちやんと見える位置)にゐるので、拍手があつても三味線の音がきちんと聞こえてくる。これはとてもうれしかつた。
二階桟敷が一階よりもよいのは、目の前をとほる人がゐない、といふことにある。
一階桟敷だと、幕間に食事などしてゐるときでも目の前を人が往来するが、二階席だと当然さういうことはない。のんびりゆつたりした気分で過ごせる。
その席にも、もう座ることはない。
それだけが惜しまれる。
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席って…なんだろう…?
Posted by: BlogPetのちゃっくん | Monday, 19 April 2010 14:57