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Wednesday, 30 January 2008

PHSよどこへ行く

愛用してきた初代W-ZERO3の挙動がいよいよアヤシくなつてきた。
基本的にキーボードのせり出す機構にガタのきてゐるやうな感じだ。
お世話になつたものなぁ。

初代のなにがいいつて、およそ電話なんかかけられないやうな外見がよかった。テガッキーで通信端末を知つたものにとつては、通話機能なんて無用の長物以外のなにものでもなかつた。

Nokia E61も考へた。DoCoMoかソフトバンクに乗り換へる。
しかし料金プランを考へるのが面倒だ。

そんなわけで。
今手にしてゐるのは、Advanced
携帯電話じみた外見からけして買ふことはないだらうと思つてゐた端末だ。
しかし選択肢がなぁ。

それにしてもWillcomの今後はどうなるのだらう。
いまだテガッキーを使つてゐる身としては、できうる限り使ひつづけてゆきたいのだけれど。
あまり明るくない話も耳にする。

考へても詮なきこととは思へども。

Monday, 14 January 2008

釣つた魚に餌をやれ

新規契約と機種変更とは、なぜあんなに待遇がちがふのだらうか。

長いことふしぎであつた。
今でもふしぎである。

ちよつと調べればそこんとこのからくりはわかるのだらうが、別段理由を知りたいわけぢやあない。
両者間にある差別を撤廃してくれればいい。
それだけの話だ。

なにも携帯電話の話をしてゐるのではない。
将棋や芝居も同じこと。
そんな気がする。

将棋は斜陽産業。
そんなやうなことを新四段のスピーチで述べた兵もゐると聞き及ぶ。
かつて千万人単位でゐた将棋人口も、今や見るべくもないといふ話もある。

そんなわけでここのところ将棋界では「将棋人口を増やさう」といふキャンペーンをずつとおこなつてゐる。
対象はこども。悪名高い「ゆとり教育」とかで本来読み書き算盤のためにあつたものを削り取つた、その時間を使つてちいさいうちから将棋に親しんでもらはう。
さういふ試みがつづいてゐる。

おとなはこの一大キャンペーンの対象たり得ない。これは身をもつて経験してゐるので間違ひない。
また、興味をもつてはじめてみて、初心者を卒業するくらゐに育つた人間の受け口はない。こちらは断言できないが、傍から見てゐてあるやうには思へない。

好きになつたら先のことは自分でなんとかしろよ。
さういふことなのかもしれない。
好きになつたんだからそこから先は自分でなんとかできるやうでないと将棋人口として数へるわけにはいかない。
さういふ考へ方もあるかもしれない。
それはそれで正しいやうな気もするが、なんかそれつて、新規契約で集めるだけ顧客を集めておいて、あとは放置プレイな携帯電話業界とどこか似てはゐないだらうか。

ちなみにやつがれはDDIポケット時代からWILLCOMを使つてゐて八年くらゐにはなるが、WILLCOMは一向に迷惑メール対策をしてくれない。ほかのWILLCOM ユーザの方のweblogなんぞを拝見してゐると、あまりに迷惑メールが多すぎるのでメールアドレスを変更する人ばかりなのだが、それはしたくない。迷惑メールが多いからメールアドレスを変更するなんて、やつがれにとつては「負け」以外のなにものでもないからだ。Docomoのアドレス宛にはもうまつたく迷惑メールなんぞ届きはしない。DocomoにできてWILLCOMにできないわけがあらうか(ここでも各企業ごとに事情はあるだらうが……おそらく客にはそんなこと関係ないはずである)。

芝居はどうか。
芝居もまた新規契約もとい新規顧客獲得にいそがしい。
初心者向けの公演といふのは年に何回かある。国立劇場の六月七月とかね。あれは基本的には学校用なのだらうが、席さへあいてゐれば一般の人間だつて見ることができる。まあ、悪い学校にあたつて「親の顔を見てみたいぜ」と内心で毒づくことになることも多いにあるがね。

だがしかし。
その初心者向けの公演を見て、「あれ、歌舞伎つて案外おもしろいぢやん」と思つた後、どうすればいいかといふと、これがチトむづかしい。
歌舞伎座とかに行けばいい?
しかし、それにはかなりいろいろ調べなければならない。
たまたま行つてみたら、難解なものばかりで「やつぱりダメだ」といふ気分になつてしまふかもしれない。あるいは去年の八月は第二部のやうに「……これが歌舞伎?」といふやうな演目ばかりでがつくりきてしまふかもしれない。
そばにあるていど歌舞伎を知つてゐる人がゐれば助けになつてくれるかもしれないが、世の中さう甘くはない。

好きになつたんだから、それくらゐは調べて劇場に来てほしい。
さう思ふのも人情。
けれども、ここで今ひとつ「歌舞伎つてかういふものよ」といふやうな本公演があつてもいいんぢやないか。そんな気がするのである。
さうすると、たとへばあるていど芝居に通つてゐる人も初心者を誘ひやすい。案外「歌舞伎、見てみたいんだけどさー」といふ人を誘ふのはむづかしい。この演目・配役ぢやなあ、と見送る月のなんと多いことか。

かくして顧客を逃してゐることつて結構あるんぢやないかな。

Sunday, 13 January 2008

浅草歌舞伎のおもしろいわけ

浅草歌舞伎がおもしろい。
正直云つて、今月一番おもしろいかもしれない。
個々の演目なら他の劇場にもつとおもしろいものがいくつもあるが、全体的に見て一番はやはり浅草だらう。

理由はかんたんだ。
歌舞伎らしい演目ばかりだからである。
贅沢承知で云ふならば、これで中幕があればほんたうに文句ない。それも人気演目ならなほのこと。中幕があればきれいに一幕目に丸本、中幕として所作事、二幕目に世話物とならぶではないか。
しかしまあ、それはないものねだりといふものだらう。

二日は初日に歌舞伎座で昼の部を見てきた。
見た直後の感想はこちらにゆづるとして。
♯ちなみにそちらでは芝居を見た直後の感想を毎回あげてゐる。

今月歌舞伎座の昼の部の問題は、やはり五幕もあるといふことであらう。
初春だから松羽目もののめでたいものははづせない(猩々)。
次は丸本物。まあこれはいい(一条大蔵譚)。
春だし、御大のためにちいさいとはいへ一幕まうけやう(女五右衛門)。
それから世話物。これもまあいい(魚屋宗五郎)。
最後に「お祭り」で明るく締めやうや。

はつきり云はう。
これは欲張りすぎである。

猩々、一条大蔵譚、魚屋宗五郎はいい。
女五右衛門とお祭りはどちらかだけでいい。

いや、歌舞伎座の話はとりあへずおくか。

公演の筋書(浅草公会堂では「パンフレット」と云つてゐたやうな気がする。確かに「筋書」といふよりは「パンフレット」といつた趣の冊子だ)には、「(切られ與三は)これといつた事件が発生するわけでもないし、何年も前から演目として候補にはあがつても最終的には見送つてきた」といふやうなことが書かれてゐる。

さうなんだよなあ。「與話情浮名横櫛」こと「切られ与三」で普通上演される木更津の場と源氏店の場つて、別にこれといつた事件も起こらないし、ただ「いい男」と「いい女」が出会つて戀に落ちてひどい目にあつて別れ別れになつてさて再会してみたらこはいかに……つてまあ筋だけたどればそれなりに劇的ではあるけれど、さて、それでは舞台はどうかといふと、とくにもりあがるところはない。かの有名な與三の科白は格別にいいんだが、でも、それだけつて感じではある。

しかし。
それでもこの演目、なぜだか好きなんだよなあ。
どこがいいのかと訊かれてもわからない。多分最初は馬のしつぽな感じのお富さんが好きだつたんだと思ふが、今となつてはそれだけでもないやうな気がする。

それが証拠に浅草の夜の部でもなんだかすつかり堪能してしまつた。

鴻上尚史の本に「名セリフ!」がある。古今東西の名せりふを集めた一冊だ。以前ここでも紹介した。鴻上尚史は「俳優がオーディションで使へるやうなもの」を選んだ、といふやうなことを書いてゐる。
「古今東西」と書いたが、この本にはすつぽり抜け落ちてゐるものがある。
それは、浄瑠璃や歌舞伎の名せりふだ。

「名セリフ!」の中には
「知らざあ云つてきかせやせう」も
「今頃は半七つつあん」も
「十六年は一昔」も
「そりや聞こえませぬ伝兵衛さん」も
「赤城の山も今宵を限り」さへない。
「別れろ切れろは藝者の時に云ふことば」もない。

つまり、現代のオーディションを受けやうといふやうな俳優は、そんなせりふは口にしない。
さらに云へば、結局上にあげたやうな名せりふといふのは古典(新国劇や新派は古典か? さう訊かれたらやつがれは「うむ」と答へる)、もつと云ふと特別な役者しか口にしないせりふだといふことだ。

そして、「名セリフ!」には入れられなかつた「しがない戀の情が仇」といふ天下御免の名せりふ、切られた與三郎のこのセリフは、ある特別な役者にだけ許されたせりふだと云へる。

歌舞伎的な、あまりにも歌舞伎なせりふ。
そして、これがあるからこそ、「切られ與三」といふ芝居は残つてゐるやうな気がしてならない(もちろんそんなことはないがね)。

そして、さういふ歌舞伎のよさとわるさを兼ね備へたやうないかにも歌舞伎な演目を、先輩役者に教はつて、教はつたとほりにしやうと丁寧に演じる若手の姿が、浅草歌舞伎をおもしろくしてゐる。

そんな気がしてならない。

「金閣寺」もよかつた。
雪姫は澤瀉屋市川亀治郎で、これが滅法かはゆらしい。なんだらうね、あのかはゆさは。それでも迸るものがごくまれに出てしまふところがまたよかつたり。

昼の部は席をおさへそこねたのだが。
んー、これはやはり見に行くべきか。
吃又は好かないから取らなかつたんだよね。
うーん、今からぢや間に合はないかな。

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