持てる力の使ひ方
たとへば、ものすごく大きい音の出る楽器が抑へた音で演奏してゐるのを聞くのが好きである。
銅鑼を力一杯「ジャ〜ン」と叩くのではなく、「しーん」となでるとか。
ミュートをつけた時のトランペットやトロンボーンの音であるとか。
もともと小さい音しか出ない楽器が好きといふ話もあるがね。三味線とかファゴットとか。
あ、さうさう、ファゴットとかコントラバスとかが本来低音担当なのにムリに高い音を出して演奏してたりするのも好きだつたりする。オーケストラ・ド・コントラバスの演奏にあるやうなのとかね。
「千の風になつて」なんかだつて、朗々と歌ふのではなくて、そつと囁くやうに歌つたらもつといいだらうなあ、と、思つたりする。
もちろん、歌ふ人は朗々とした聲も出る人でなければならない。小さな聲しか出ないかすれたやうな聲しか出ない人ではいけない。
かういふのは個人の趣味なので、やはり銅鑼はでつかい音で「ヂャ〜ン」と鳴らして延々とその余韻を楽しむのがいいと云ふ人もゐるだらうし、トランペットやトロンボーンのすこんと抜けた大きな音が好きといふ向きもあるだらう。
この「抑へた音量」とか「抑へた演奏」が好き、といふのは、どうやら「一条大蔵卿が好き」といふのと同根のやうな気がする。
ここでいふ一条大蔵卿は「一条大蔵譚」に出てくる一条大蔵卿だ。あの「つくり阿呆」の大蔵卿である。
……世の中住みにくいはずだよなあ。
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