Page Turner
_The Well of Lost Plots_を読んでゐる。
これがなぜだかおもしろい。
文庫本で「文学刑事サーズデイ・ネクスト1 - ジェイン・エアを探せ!」を読んで、これがたまらなくおもしろかつた。
著者はジャスパー・フォード(Jasper Fforde)。元々は映画の道を目指した人らしい。
主人公はThursday Next。三十代後半の女性。刑事、かどうかは……まあ刑事なのか。作品世界は20世紀末で、まだクリミア戦争が続いてゐる。サーズデイもまたクリミアに兵士として赴いた過去がある。ここで実の兄と元・戀人とのあひだに一悶着あつたりする。兄は戦死、戀人も負傷する。
またこの世界では文学が異様に愛されてゐる。
サースデイは、悪事を企む大企業(つて書くとヤスい感じがするが)や世界第三位の悪人と戦ひつつ、かつての戀人について葛藤し、一方で「ジェイン・エア」の結末に関与する。
……つて書いててなにがおもしろいのか、といふ感じだなあ。やつぱり柴田くんはすごいや。柴田くんが説明するとたいしておもしろくない小説でもとてつもなくおもしろさうな感じがするものな。
まあ、新聞の書評などから表現を借りてくると、「モンティ・パイソン」で「ダグラス・アダムズ」、また「大人向けのハリー・ポッター(……これはどうかなあ)」で「ブリジット・ジョーンズ」なのださうである。
第二作である「さらば大鵺」は文庫になつてゐなかつたので、図書館で探したが見つからなかつた。そこで、_Lost in a Good Book_を購入して読んだ。
原書つてなかなか読み進められなかつたり途中で挫折したりすることが多いのだが、これは気がついたら読み終はつてゐた。シリーズ化が決まつたからだらう、こちらはつづきもの。先が気になつて、つい_The Well of Lost Plot_に手を出してしまつた、といふわけ。
なにが魅力的つてやつぱり主人公かなあ。強いけど強すぎない、でも巨悪にも敢然と立ち向かつてゆく。
でも脇役もまたいい。主人公のパパは最高だ。発明家のおじさんもいい。二作目から登場するミス・ハヴィシャムのよさはなんといつたらいいのかなあ。ミス・ハヴィシャムは御存知ディケンズの「大いなる遺産」の登場人物だ。
また、世界設定もおもしろい。先にも書いたがまだクリミア戦争が続いてゐて、世の中の人は文学を愛してゐて、本を読むだけでその世界に入つて行ける人々がゐて、本の中にはこの世と同じやうな世界があつて……。うーん、説明するのもまだるつこしい。是非「読んで」と云ひたい。
第三作以降は翻訳されないのかなあ。文学作品からの引用が多いからさういふのの手配とかが手間なのか知らん(やはり沙翁なんぞは定番訳といふのがあるだらうし)。それとも最近古典文学を新たに翻訳するのが流行つてゐるからそのあたりで「どの訳を頂戴したものか」といふ悩みが生じてゐるのか知らん。
ジャスパー・フォードにはほかにもThe Nursery Crime といふシリーズがあるらしい。
うーん、読んでみたい。
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