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Sunday, 29 October 2006

余裕がない

受験勉強をしてよかつたと思つてゐる。
実際その勉強が役立つたわけではなかつたが(勉強したことは試験に出なかつたからだ)、それでもしてよかつたと思つてゐる。
社会科は世界史を選択するつもりだつたので、当時世界史ではもつともむづかしい問題を出すといはれてゐた早稲田大学は政治経済学部の過去問題を解いたりしたつけ。世界史といふよりは「時事問題なんちやふの?」みたやうな問題も多かつた。「フォークランド紛争で問題になつたフォークランド諸島のアルゼンチン名を記せ」みたやうなね。「マジマジの反乱」なんてのもここの過去問で知つた。

わかつてゐる。過去問といふのは過去出題された問題からその傾向を学び、合格する一助と為すために使用するものだ。
でも楽しかつたからいいのだ。

話はかはつて近頃、まつたく余裕がない。
十月に職場をうつつて、通勤時間はそれまでよりずつと短くなつた。これまでは朝二時間半・夜二時間ちよいだつたのが、朝二時間・夜一時間半くらゐになつた。
♯……それでも朝は二時間もかかつてゐるのか。
♯くっっっ……

けれども、これまでやつたことのない作業ばかりだつたり、予想外の展開が多かつたり、また職場自体がかはつて初対面の人々と働いてゐたりといふことがつもりつもつてゐるのだらう、気持ちの上でまつたく余裕がないのだつた。
♯したがつてエントリもなかつた、といふ話もある。

でも余裕がないのつてそれだけなのかな、と思つたりもする。
たとへば、まつたく新たな分野の仕事をする場合、仕事に入る前あるいは入つた直後にその助けになるやうな講習会を受講するなりあるいは自分で独学するなりといつた時間があつたりすると思ふのだ、普通は。
少なくとも上司の話を聞く限り、ある仕事から他の仕事にうつる場合はいはゆる「アイドリング期間」をまうけて次の作業にスムースにはいれるやうにしてゐる、といふ。また同僚の話でも、次の仕事に行く前にリフレッシュ期間のやうな休みを取らせてもらつたなんてなことをきく。

…………そんなの、今まで一度もないんだけどな。
まあ長いことひとつの仕事に従事して来たといふこともあるが、ここ三年ばかりは毎年一度は職場をかはるやうなことがあつて、でもそのたびに前の日まではある職場にゐて、次の日からは次の職場といふことばかりだつた。
それがあたりまへだと思つてゐた。

……「スキル不足」を理由に辞めさせられるんぢやなからうか。

そんな不安もあつたりする。

まあしかし、えうは余裕がないんである。全社員がしやかりき(つて死語?)になつて働いてはじめて、いや、全社員がしやかりきに働いてもなほ、目標に到達しないときてゐるからだ。
そして、それはやつがれの勤める会社だけの話ぢやない。
最近、飲酒運転が問題になつてゐる。
飲酒運転はよくない。絶対やめないといけない。してはいけない。
飲んだら乗るな乗るなら飲むなとはよく云つたものである。
だが、たとへば運送業者の仕事の過酷さを考へた時、つい飲んでしまふといふ気持ちをわからないとはいへない。
♯だからといつて飲んでいいわけではない。
♯……くくく。

また長いことお世話になつてゐた客先もさうだ。
はじめてお世話になつたころは、年に二回の大きな企画があつて、準備も入念だつたし客側も十分commitしてきて仕上がりに厳しく目を光らせてゐた。
あれから幾春秋(いや、それ、大袈裟だから)。
その客先も合併し、いはばちがふ企業になり、そして年に二回だつた大きな企画はなくなつてなんだかよくわからない企画が日々林立するやうな形になつた。
早くとにかく早く、安くとにかく安く仕上げる。
さういふ仕事ばかりになつた。
そして、客側の人数は増えたはずなのに、仕事にcommitしてくる客は皆無になつた。全部おまかせ。こちらちから「過去にかういふ作業をしました。完璧を期するためにも実施したいのですが」と云つても「調整に時間がかかるから」とか、単に「コストの無駄だから」といふ理由で実施されなくなつた。
その結果は書くまでもないだらう。

なんだか世の中全体が「余裕がない空気」に満ちてゐる。

さう思つたのは去年の今頃、丁度通勤時間の東京駅は八重洲北口に降り立つて日本橋方面に向かつて歩いてゐた時のことだ。
道行く人の大半は勤め人とおぼしい。
行き交ふ人もまた同じ。
そして、なんだか知らないがあたりの空気が殺伐としてゐるのである。
みな余裕なくせかせかと歩いてゐる。
もし今あちらからまつつぐ歩いてくる女性にぶつかつたら、血を見るやうなケンカに発展するんぢやないか。
そんな感じがした。
電車の中もまたそんな感じだつた。
以前だつたら満員電車に揺られてゐても、「まあみんな同じ状況なんだからさ」といふ空気があつたやうに思ふ。寝不足なのだらう立つたまま寝てしまつて時折膝がかくんと折れるそんな乗客がゐても、それを表立つてとやかく云ふやうな人はまれだつた。
それが最近はさうでもない。
「お前だけが寝てないわけぢやない」といつた空気に満ちあふれてゐるやうに感じられる。

まああくまでもやつがれがさう感じるといふだけで、昔だつて電車の中で立つたまま寝る人には周囲は冷たかつたし、道行く人もせかせかしてゐたのかもしれない。
でも、「他人がさうあること」への許容が著しく低くなつてゐるやうに感じられて仕方がないのだ。

今回の世界史未履修問題も、さういふところに端を発してゐる気がする。
えうは、「他人はどうでもいい」余裕のなさ。
「他人はどうでもいいから自分にかかはつてほしくない」余裕のなさ。

個人的には世界史より地理や日本史を必修にすべきだとは思ふ。特に世界に出て国際的に活躍する云々といふ時に、世界史よりも日本史を知らない方が問題があると思ふ。「彼を知り己を知れば百戦危うからず」だが、「彼を知り己を知らぬ」場合について孫子は述べてゐない。自分のことは知つてゐて当然だからだらう。自分を知らずしてなんの国際人か。
といふやうな論議がもつとあつてもいいのに、あまりない。残念である。

もとい。

えうするに、世界史はどうでもいいわけだ。他人のこと他所の国のことなんて、過去のことなんて、どーでもいい。とりあへず受験は受けやすい科目で受けるから(これは戦術的に正しい)、あとの科目は当面どうでもいい。

でも、そのどうでもいい科目をあとで学ぶことはしない。まづしないな。

かういふ時こそ「school」の語源を云々する記事やコラムが出て来ないかなあと思つたりするのだが、昨今はこれももう流行らないらしい。
余裕がないからだ。
さうにちがひあるまい。

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