英國的なるもの
It is elementary, my dear Watson.
このあたりがイギリス初体験だらうか。
おそらく子供のころ一番最初に意識した外国といふのはアメリカ合衆国で。
次くらゐに米国とはちがふ、まだ女王様がゐて皇太子もゐていはゆる王族がゐる、でも統治はしない、仏蘭西みたやうな革命のなかつた國として、「グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国」すなはちイギリスに出会つた。そんなやうな気がする。
シャーロック・ホームズで印象的だつたのは、ホームズとワトソンが互ひの名字を呼び合ふところ。英語の授業では「あちらの人はなかよし同士ならファーストネームで呼び合ふ」と習ふのだが、これをいきなりくつがへしてくれてゐる。しかも呼び捨て。つまりさういふ付き合ひもあるといふことがここからわかる。さういへばポアロとヘイスティングスもさういふ呼び方をしてゐたか。ポアロはヘイスティングスのことを「Mr.」つきで呼んでゐたかな。
♯そしてこのあたりからやつがれは「ワトソン=女性説」はあり得ないと思ふものだが……
♯どんなもんだらう。
そして次にくるのがThe Beatles。
「革命を起こしたいつて? でも破壊に手をつける時はぼくは仲間にやならないよ」
とか
「たれも聞くことのない説教の文句を書いてゐる神父」
とか
「1, 2, 3, 4 もうチトもらつていいか知らん」
とか
「世界を見たら回つてゐることがわかつたんだ」
とか
そんなことを歌ふ本邦の歌を当時のやつがれは知らなかつた。今も知らない。
だから当然好きなのは後期。特に「サージェントペパーズロンリーハーツクラブバンド」。
ビートルズ以降順調に洋楽を聞くやうになつたのだが、プログレくらゐで前に行くのをやめてしまつた、といふのはまた別の話。
たとへば「愛こそはすべて」なんかでも佐藤くんこと佐藤良明の「ラバーソウルの弾み方」を読むと「ははー、さういふとらへ方もできるのね」と、深くうなづくことしきり。単純に「愛があればほかのものなんて」みたやうな歌ぢやないといふこと。
そして、二十歳を過ぎるあたりから、初期のころの歌も好きになつてゐた、といふのもまた別の話。
もうかうなると次にくるのはモンティ・パイソン。
となるはずなのだが、やつがれにはビートルズとモンティ・パイソンのあひだにもうワンステップあつた。
それが速星七生である。
Googleで検索してもあまり情報の出てこないまんが家だが、「たいした問題じゃない」「ナナオの症候群」は実におもしろかつた。ミステリだしイギリス風味いつぱいだし、とてもよかつた。基本的には喜劇なのだが、風刺といふか皮肉といふか(satireといふか)もきいてゐて、ちよつとこんなまんが家ゐないといふ感じでなあ。
♯坂田靖子のまんがにも(「バジル氏」以外でも)イギリス趣味あふれるものがあつていい。
そこからモンティ・パイソンといふのはかなり自然な流れといへる。
実はモンティ・パイソンより先にサタデー・ナイト・ライヴに出会つてゐて、チャビー・チェイスが「Welcome to New York. It's Saturday night!」と冒頭で云ふてたころのが一番好きだつたりはするのだけれど、そしてそれはジム・ヘンソンのblackなマペットショーが好きだつたからだつたりはするのだけれど。
ジム・ヘンソンはともかく、サタデー・ナイト・ライヴはモンティ・パイソンにはやはりかなはないわけで。そら標榜するものに勝てるわけはなかなかないわけで。
故・山田康夫は「なにがおもしろいのかねえ」みたやうなことをインタヴューで云つてゐるが、おもしろいでせう。なんでマルクスはサッカー事情に詳しくなければならないのか、とかさ。当然マルクスはサッカーのことなんて全然知らないわけだけれど、インタヴュアは「知つてて当然だらう?」といふ態度である。サッカーといへばなぜサッカーの選手は碌々インタヴュアの質問に答へられないのか、とかさ。「Hells Grannies」とかもをかしかつたよなあ。
そんなところがやつがれ的「英國的なるもの」はじめだつたりはする。
あとはまあ、行つたことのない國だしね。よくはわからんのだつた。
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