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Thursday, 20 July 2006

贅沢な一ダース

困つたことになつた。
ポールペンで字が書けなくなつてしまつた。

いや、まつたく書けないといふわけではないのだが。
しかし油性であれ水性であれボールペンで字を書いてゐると手の側の紙とボールペンの角度が限りなく直角に近くなつていく。ひどい時は鈍角になつてしまふ。

確かに以前から字を書くのは下手だつたし元々不器用だから仕方ないかなと思つてゐる。
仕方がないので最近は字を書く時はすつかり萬年筆一辺倒になつてしまつた。
ただ、先日「かすれない」「書き味滑らか」といふ惹句にひかれて購入した水性ボールペンだけはたまに使ふことがある。これも鈍角になつたりするのはほかのペンとかはらないが、萬年筆のインキだとにぢんでしまふやうな紙に書く時はこれを使ふ。惹句とほりまつたくかすれないし、書き味滑らかなのだが、滑らか過ぎて書きづらいときがある。どうやら適度なひつかかりに欠けるらしい。
むづかしいなあ。

なんぞと書き乍ら、実は鉛筆にはとても心惹かれてゐる。
鉛筆を使はなくなつて久しい。年に一度年賀状の図案を考へる時に使ふくらゐで、滅多なことでは手にしなくなつてしまつた。
でも鉛筆つてなんだかいい。

庄司薫はさんざん鉛筆を試してみて、MONO100に辿りついたといふ。
新井素子は幼い頃母親の使つてゐるHi-UNIを手にして「これがほしい」と強く思ふが、母親から「自分で稼ぐやうになつてからになさい」と云はれ、作家になつてからHi-UNIを購入したといふ。

どちらかといふとやつがれはMONO100派かな。ファーバーカステルやステッドラー等の舶来の品もいいが、鉛筆は国産品がいいやうな気がする。特に信念があるわけではなくて、その土地その土地の気候やなにかにあつてゐるんぢやないかといふ気がするのだ。もちろん根拠もない。

そんなわけで、たまに文房具屋に行くとMONO100の一ダース入りなんかを目にして、「ああ、贅沢だなあ」と思ふのである。今なら買へる。お小遣ひをもらつてゐたころとはちがふ。ちよつと無理をすれば、ちよつとほかのものを我慢すれば購入できる。

買つてみやうかなあ。
さうして職場で使ふのである。
できれば肥後守も一緒にほしいところだが、やつがれがMONO100をはじめて手にしてナイフで鉛筆を研がうとした時にはもう文房具屋には肥後守はなかつた。確かカッターナイフでおそるおそる削つた。そんな記憶がある。
さう、職場でカッターナイフで削り乍ら鉛筆を使ふ。なんだか優雅ではないか。

そんな夢みたやうなことばかりを考へてゐる。

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