あちらの世界
「バックドラフト」は欲張り過ぎた映画である。
主役級だけでカート・ラッセル、ロバート・デ・ニーロ、ウィリアム・ボールドウィンと三人もゐるし(そしてたれを主役に話を作つてもをかしかない)、スコット・グレンもいい味出してゐる。
ま、この映画の主役は「火」なのだらうけれども。
ところでいい味出してゐるといへば、今をときめくキーファー・サザランドの父ドナルド・サザランドがこの映画でたまらない役どころを演じてゐる。
ドナルド・サザランドの役は放火魔で前科が何犯もある。放火の性癖もおさまつてきたからこの男を釈放しやうといふ動きがあるまさにその時に、ロバート・デ・ニーロ扮する刑事がこれに反対し、ドナルド・サザランドを尋問するのだ。
そして、結局ドナルド・サザランドの放火癖はちぃともおさまつてゐないことが判明する。
この時、デ・ニーロの尋問に答へるドナルド・サザランドのやうすがたまらない。最初はおだやかな調子で答へてゐるのだが、次第に返答する口調がアヤシくかはつていき、最後にはあちらの世界に行つてしまつたやうな目で答へるのだ。
これを見て「ああ、放火をくりかへす人といふのは、かうなのかも知れないなあ」と思つてしまつた。ドナルド・サザランドの演技には説得力があつた。
まあ実際にはいろいろあるんだらうとは思ふが。
ところでこの映画では冒頭から放火が相次いでゐて、その犯人をつきとめやうとするのだが、ドナルド・サザランド、この犯人当てに重要な役割をつとめることになる。
といふわけでこの映画、やつがれにとつてはやはりドナルド・サザランドとスコット・グレンと「火」の映画なのだつた。
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