再会にも似た出逢ひ
本屋でまんが文庫の棚のあたりをぶらぶらしてゐた時のことだ。
思はず足を止めてしまつた。
まさかこのまんが家の作品を読めることがあらうとは思つてゐなかつたからだ。
まんが家の名は、樹村みのり。
残念乍らといはうかなんといはうか、やつがれ自身は樹村みのりには間に合はなかつた世代である。からうじて少女コミックの広告ページに名前を見つけることがありやなしやといつた状態だつた。
なのになぜ、この名前を覚えてゐるかといへば、やつがれが少女まんがを読んでゐた当時、「樹村みのりが好き」「樹村みのりのやうな作品を描きたい」といふまんが家が多かつたためである。
どんなまんがを描くんだらう。どんなすてきな作品か知らん。
さう思つてはみたものの、さて、それではとあたりをみまはしてもなかなかまんがは手に入らない。あるいは書店に存在してもこちらに先立つものがない。
もう長いこと忘れてゐたと思つてゐたのに。
一読、「なるほど、かういふ作品を描きたいといふ気持ちはわかる」といつたところ。さらりとふかい。そんな感じ。
しかし……今の若人には「なにがかいてあるんだか、わかんない」と云はれてしまふのかもしれないなあ。「ユージュアル・サスペクツ」の結末がわからない人が多かつたといふ話を聞いてから、どうも読み手の力を見くびりがちでよくないのだが、ついさう思つてしまふ。
それにしても、樹村みのり。
もう一冊文庫が出てゐるといふので、探してみたい。
……でもこれがなかなか見つからなかつたりするんだよね。
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