飛梅
通勤途中、後ろを歩いてゐるおばさまふたりがしきりに「思ひおこせよ」とか「忘れないでねつてなことをうたつてるのよね」とか云つてゐる。
どうやら全部は思ひ出せなかつたやうだが、菅原道真の歌のことを喋つてゐたらしい。
東風吹かば匂ひおこせよ梅の花 主なしとて春な忘れそ
つちふ歌だつたと思ふが、これがたまに「春を忘るな」になつてゐたりする。
うーん、これつて「な……そ」構文ぢやないの?
「忘れてくれるな」つてな意味だとはるか昔に習つた気がする。
「春を忘るな」と「春を忘れてくれるな」では全然意味がちがつてくると思ふんだがどうか。
少なくとも詠み手の気持ちはまつたくちがふと思ふんだけどなあ。
春の小川が「さらさらいくよ」になつちやふのにもこまつたものだ。
そのうち「うさぎ追つたあの山」になつちまふんぢやないか、とかね。
それとも全体をかへないといけないから「ふるさと」はそのまま残るだらうか。
政官界が文語に冷たいのはよくわかつてゐるつもりだけれど、なんだかさみしい。
でもまあおばさんが飛梅の話でもりあがつてゐるうちは大丈夫かな。
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