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Wednesday, 16 November 2005

紅茶の向ふに世界が見える

最近、紅茶にはなにも入れずに飲むやうになつた。

以前から、ハロッズのNo.14を飲む時に限つては、最初の一杯はストレートで、あとは牛乳を入れて飲むといふ習慣はあつた。

しかし、愛用してゐるカップがマグだつたため、 今一つ紅茶の色を楽しむことが出来ずにゐた。
ティーカップは紅茶の色を楽しむため、本来浅くできてゐるといふ。
それがマグになつてしまふと、底が深過ぎていつも同じ真つ黒な色しか見えなくなつてしまふわけだ。

紅茶の色を楽しむ話は、確か磯淵猛の本に出てくる。
磯淵猛の店の常連なのに、別段紅茶にこだはりがあるわけではないらしい客がゐるといふ。
いつも来てくれてゐるので、ある日サーヴィスとしてミルクティーを出すと、件の客、「紅茶には何もいれないでくれ」と云ふ。
「自分には紅茶のことはよくわからないが」と云つて、その客は紅茶の半透明の水色を楽しんでゐるのだと告げる。建築家(だつたと思ふ)だといふこの客には、その水色を通して世界が見えるといふのだ。さうしてあれこれのことに思ひを馳せるのだといふ。

さうだよなあ。コーヒーぢやちよつと向ふが透けて見えるといふ気分にはならない。

昔からミルクティー党のやつがれは、その時は「ふうん」と思つただけだつた。
だが、「最初の一杯目はストレート」にするやうになつて、昔読んだこの話を思ひ出した。そしてなんとか水色を楽しめないものかと思ふやうになつた。
けれども世の中に出回つてゐるティーカップはどうもファンシーに過ぎるといふか、さうでなければ高価だつたり単にそつけないだけだつたりとなかなかこちらの買ひ気をそそるものがなかつた。

その時に、ボダムのYOYO SET を見つけた。底が深くてたつぷり入る作りながら、ガラス製なので水色がきちんと見える。

といふわけで、お茶を楽しみつつ、かといつて別段その水色の向ふに見えるはずのあれやこれやに思ひを馳せることもなく、日々過してゐる。

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