黒い手帳
MOLESKINE と出会つたのは、去年の十月十六日、KNIT OUT で六本木ヒルズへ行つた時のことである。
KNIT OUT といふのはあみもののイヴェントで、簡単に云ふとみんなで外で編まうよ、といつたところか。この時は紡績会社各社が無料でマフラ一本分の毛糸を配り、クロバーがKNIT OUT 用に棒針を作成・これまた無料配布して、大盛況のイヴェントになつた。
十月といふのにその日はとにかく寒くて途中で退散したのだが、この時ふらつと立ち寄つた店にMOLESKINE があつた。
これまた前回書いたが、黒くて質実剛健といつた外見に惹かれたものの、ピカソだのヘミングウェイだのといつた Big Name を連ねた惹句がついてゐて、正直云つてちよつと浮ついた手帳かと思つた。
しかも価格がまたちよつと破格である。
そんなわけで悩んだが、結局この日購入した。
以来、ほぼ毎日持ち歩き、ほぼ毎日こちよこちよ記入してゐる。
最初の頃はタチカワの新ペン先で横書きしてゐた。そのうち萬年筆で書くやうになつて、気がついたら縦書きになつてゐた。
よくよく見ると、あみもののゲージを取つた記録とか、「休みのあひだにこれはやりたい」といふやうな箇条書きがあつたりする。多分手元にあつた紙がこれだつたのだらう。
だが、主な内容はほんたうに「つれづれ書き」といつたところだ。
くどいやうだが、毎日の日誌はほぼ日手帳や三年手帳に書いてゐる。
両方に共通してゐるのは、一日一ページ(ただしもちろん三年手帳は一ページに三年分書けるやうになつてゐる)といふことだ。
つまり、書き込む内容が日付にしばられてしまふのである。
だが、日々考へてゐることといふのは、日付にしばられてゐることばかりとは限らない。数日間にわたつて、時には数ヶ月数年にわたつてぽつぽつと考へるやうなことだつてある。
また、ひとつの事件について、後になつて詳しい考察を見たり聞いたりすることがあつたりすると、さかのぼつて思ひ出しながら書いたりする。
まあ、前も書いたやうに、「どーして萬年筆で下らないことをつらつらと書いてゐると楽しいのか知らん」といつたくだらないことも多いのだが。
やはりこの手帳、手放せないのである。
毎日持ち歩いてゐるのに、くたびれた感じがしないところもいいね。
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