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Friday, 29 April 2005

色褪せる

ペリカンのペリカーノフューチャーはどうにも安つぽい感じのする萬年筆である。

なんぞと書くと「気に入らないのか」と思はれる向きもあらう。
実はその逆で毎日のやうに使つてゐる。

ほぼ日手帳に書き込む時に使用してゐるからだらう。
現在は、銀色の萬年筆に紫色のインキを入れて使つてゐる。
紫色のインキが、ほぽ日手帳の色つき罫線になんとなくしつくりとくるのである。

ペリカーノフューチャーはペリカーノジュニアと同時に入手した。
上京したをりに伊東屋によつて、じつくり見た。
この時伊東屋にはペリカンのカートリッジインキの見本があつて、それぞれの色で書かれたものを見ることができた。
その件については 2004/11/7 のエントリに詳しい。
いづれにしろ、紫色は退色しやすいやうに見受けられた。

ところで、本邦のレース糸は退色しやすいと云はれてゐる。
レース糸といふと、大方は白い糸、ほかにはせいぜい生成りの糸を想像するのだらうが、ちやんとした手芸屋に行くと色とりどりのレース糸が並んでゐる。
オリムパス、ダルマといつたかうしたレース糸の色糸は、先達によると色が落ちやすいのださうだ。
DMC のレース糸だとさうでもないらしい。
このあたり、染色技術に差があるのだらう。

そんなわけで、その話を聞いてからといふもの本邦のレース糸では色糸をあまり使はないやうにしてきたのだが。

ある時、「でも退色するほど使ひこまれるつてのもいいよな」といふことに思ひ至つた。

たとへば、退色の話を耳にする前、オリムパスやダルマの色糸でお人形の服を編んだりしたが、これらは全然退色してゐない。お人形にたまに着せるだけなので洗つたりしないし、また着せつぱなしにしてゐてもほこりのかからないやうなところにゐるのでこれまた洗ふ必要がないせゐかもしれない。日のあたらないやうなところにゐるのもいいのかもしれない。

つまり、退色するといふことは使ひこまれてゐるといふことである。

それつてなんだかすばらしいことなんぢやない?

このことに気づいて以来、またレースの色糸を使ふやうになつた。

インキの退色も同じやうなものな気がする。
書くからこそ、退色する。書かなければ退色しない。
褪せた色に過ぎ去つた年月を思ふこともあらう。

そんな感じでペリカンの紫のインキを使つてゐる。

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