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Saturday, 12 February 2005

久しぶりに文楽

久々に文楽へ。二年半ぶりくらゐだらうか。

いろいろ悩んだが、第三部だけ。阿古屋の琴責めと卅三間堂棟由来である。
ほんたうは第二部の沼津なんかも見たかつたのだが……まあよしとしたい。

何を隠さう文楽はよくわからない。ただただあの太棹の響きを聞きたくて行くやうな気がする。
以前、ひどい風邪をひいてゐて、でも文楽の席を取つてあつて、「こんな状態で行つても途中で咳込んだりしたらまはりの人に悪いよな」と行くのをあきらめかけたことがあつた。
だが、咳止めを飲み、無理やり出かけた。
この時、冒頭いきなり三味線のでーんといふ音が腹に響いてたまらない心地になつた。
「ああ、来てよかつた」と心底思つた。
演目はお染久松ものだつた。座席は前方下手寄りといふあまり見やすい位置ではなかつた。いや、「あまり」はぬいてもいいかもしれない。はつきり云つて大変見づらい位置だつた。
だがこの時はその悪条件が吉と出た。上手から久松に手を引かれて出てくるお染ちやん、久松の人形遣ひに隠れてしまつてお染を遣つてゐる人がまつたく見えない状態だつたのだが、この時のお染の愛らしさ、また少し憂いに沈んだやうすといつたら。
まさにお染は生きてゐた。

そんなわけで、通ひづらい場所にあるにもかかはらず、見に行くやうになつた。
さう、国立劇場つて行きづらい場所にあるよね。最寄り駅は地下鉄半蔵門だが、そこから国立劇場に至るまでの道のりがあまり整備されてゐるとはいへない。
といふのは昔の話で今はだいぶましになつてきてはゐるが、それでも夜の部の後なぞはあまりいい感じではない。
さらに半蔵門駅には駅から地上までのあひだにエレヴェータやエスカレータの類がない。足弱のご老人にはこたへやう。
国立劇場の目の前には都バスの停留所もある。しかしバスは道路が混んだら最後といふ話もある。あるいはタキシーか。芝居や文楽のご見物にはタキシーで劇場に乗り付けるくらゐの財力がないとダメ、といふことだらうか。さうなんだらうな。

文楽についてはよくわからないので、「堪能した」としか云ひやうがないのだが……。
文楽公演の客席には他の芝居・芸能に比べて男性の割合が高いといふ特徴がある。
そして、なぜかみな説明したがりであつたりする。
今回も背後の席で老人のつがひと若人のつがひがゐたのだが(わざわざふりかへつて見たりはしてゐないのではつきりとはいへないが)、幕間になるとどちらも自分の連れに一生懸命いろいろ講釈してゐた。
まあさういふのを聞いてゐるのはおもしろいがね。まちがつたことを云つてたりすると、「ああ、教へてさしあげたいっっ」といふ気になつていけねえやな。
たまに対等に芝居や文楽の感想なんぞを語り合つてゐるつがひもゐる。こちらの方が見てゐて微笑ましいといふか、なんだか自然な気がする。
ま、 watcher としてはどちらも興味の対象ではあるのだがね。

とりあへず鶴澤清治の三味線が聞けて満足して帰途に着く。

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