毛糸貧乏その後
糸を増やしちやいけないんだぞ、と、みづからに云ひ聞かせて幾星霜。
今日も「やつてもーた」。
だつてだつてだつてー、手芸屋に行つてしまつたんだから、仕方がない。手ぶらで帰るわけにはいかないのである。
いや、手ぶらで帰ればいいことはわかつてゐる。わかつちやゐるけどやめられない。
三月に寒い地方に行くことになつたので、帽子でも編まうといふ気になつた。
そこでダイヤミュゼとパピーのミュルティコ、野呂栄作のくれよんをそれぞれ二玉ずつ購入した。
それぞれバイヤスラインの帽子を編むつもりである。
バイヤスラインの帽子といふのは、確か去年の十一月だか十二月だかの「おしゃれ工房」に出てゐたやうに記憶してゐるが、えうは編地を斜めになるやうに編んで帽子にするものである。
斜めにする方法にもいろいろあると思ふが、今回は表段の最初で増やし目最後で減らし目をする。メリヤス編み二段裏メリヤス編み二段で、表側でメリヤス編みをする時にだけこの増やし目・減らし目をする。
ミュルティコはしぶい色合ひだが、くれよんと特にミュゼは大変に派手な色合ひである。ミュゼはここでいふ「ピッコロカラーヴァリエーション」といつてもいいやうな段染め糸で、特に紫といふかピンクの部分が鮮やかだ。緑色の部分も華やかなところがある。
……こんな派手なの、ほんたうにかぶるんだらうか。
むむむむむ。
といふわけで、早速八号棒針で編み始める。いいぞお、ダイヤミュゼ。編地が軽くてしかもあたたかいといふすばらしい糸である。色合ひも……派手な点を除けば……すてきだしな。
さう、今回気がついたのだが、かういふ明るい色合ひつて編んでゐて楽しい。どちらかといふと暗く無彩色な色を選びがちなのだが、ちよつと考へをあらためやうかといふくらゐである。
問題は、あまりにも楽しいので編むのをやめられないといふことだらうか。
しかし帽子を三つも編んでどうするよ。
ちなみに、がま口用にといふので口金とビーズも買つてみた。レース糸はたくさんあるので見送つた。
……ビーズも見送つてもよささうなものなのだがな。
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