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Tuesday, 07 December 2004

史実史実とたくさんさうに

来週で大河ドラマ「新選組!」も最終回を迎へる。
今年は例年になく「史実とちがふ」といふ点が取り沙汰されたやうに思ふ。これも原作がないゆゑか。原作があれば「原作に忠実に作つたから」といふ云ひ逃れもできる。今回はその逃げ道がなかつたから詰まされてしまつた、といつたところなのかもしれない。

その一方で、原作がなかつたからよかつた点もあるのではないかと思つたりもする。
たとへば登場人物だが、芹沢鴨や沖田総司は皆無とはいはないが今まであまりないやうな人物に描かれてゐて新鮮味があつた。
#沖田総司については、大河ドラマをくさしてゐたまんが家の描くそれよりずつとよかつたやうに思ふ。
#「風光る」に出てくる沖田総司には同形がそこらへんにごろごろしてゐてまつたくおもしろみも新味もない。
#まあ「お約束」が好きな向きにはそれでもいいのかもしれないな、とは思ふ。
あんなに魅力的な勝海舟なんて見たことなかつたしなあ。あと佐々木只三郎っっ。よかつたよなあ。実によかつた。竜馬暗殺のくだりなんて「うをー、只三郎さま~っっ」、だつたよ。あの回がよかつたとしたらそれはもう一重に伊原剛司演じる佐々木只三郎の気迫ゆゑであらう。ああ、只三郎さまがこんなにいいのに、殺される竜馬の情けなさよ……、とはいはない約束だらうか。

また、「ある隊士の死」なんて大河ドラマ史上に残るくらゐおもしろい回だつたと思ふのだがどうだらう。山南敬助と明里の別れの場面なんかも(ありきたりといはばいへ)実によかつた。

個人的には小劇団系の役者が多くて楽しく見られたし(その他の配役で一部「…………」と思ふ向きはあるものの)、栗塚旭・島田順司とオールド・ファン(わら)にはなつかしい俳優の出演もあつて、例年になくサーヴィスよかつたしな。

主役まはりがぬるいのは大河ドラマのお約束だからまあそこはそれ。

だいたい「史実が」「史実が」なんていふ輩にろくな奴ぁゐねえよ。
佐久間象山を演じた石坂浩二の水戸黄門をひきあひに出すまでもない。
#石坂浩二が留めだなんてっっ(>_<)と、嘆いたこともありましたな。

物語と史実はちがつて当然。鍵屋の辻において一人で三十六人を斬つた人がゐるといつてたれが信じますか。「髑髏城の七人」ぢやああるめえし。
#……実は信じる人もゐる。さういふ人はすくはれる。足元を。

だけどそれをもつて「史実とちがふ」といふ人はない。多分。
いいんだよ、別に一人で三十六人斬りをしたつてさ。その方がもりあがるぢやんよ。
といふことがわからない類が多いんだらうなあ。住みにくい世の中である。

今回は比較的近い時代のことをやつてゐたからよけいに「史実とちがふ」「史実とちがふ」とお念仏を唱へる唐変木が多かつたのだらう。これはこれで致し方ないか。

来年は……さすがに「弁慶なんてゐたかゐなかつたかわかんないのに出すんぢやねえよ」とかわけわかんないことを云ひ出す人は減るだらう。皆無とはいへないが。
主役がほとんど伝説の人物だからね。その点、今年よりは楽だらうと思はれる。

まあ見ない可能性も高いんだがね。

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