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Sunday, 07 November 2004

かきかた教室

万年筆を購入した。
ペリカンのペリカーノ・ジュニアペリカーノ・フューチャーの二本。
どちらも、書き方を習ふ子供用だといふ。
本邦でたとへて云ふなら2Bの鉛筆といつたところか。

ペリカーノ・ジュニアの方が初心者用で中字のみ、フューチャーの方がもう少し年上のお兄さんお姉さん向けで細字のみとのこと。
ジュニアは白いキャップにシースルーのボディ。ボディ部は赤・黄・青・緑がある。
フューチャーは全体がマットな感じで、やはり赤・黄・青・緑があり、ほかに少し値段が高めの銀がある。

インクも色とりどりで、black, blue black, royal blue, violet, green, turquoise blue, red がある。万年筆を買ふとついてくるのが royal blueで、明るい青といつたところだらうか。Sample の万年筆に入つてゐたのも royal blue であつた。
色とりどりなのはいいが、やはり普通にはあまり使はないやうな色は退色しやすいやうで、店頭では red などはほとんどオレンジのやうな色になつてゐたし、violet はピンクつぽい色になつてゐた。まあ、実際には royal blue 以外の色は試し書きしたわけではないので、violet に関してはもともとさうした色なのかもしれない。

目移りしたが、とりあへず無難に blue black、それとあまり退色しなささうな turquoise blue と、おもしろさうなので violet を買つてみた。

さて、それでは早速ペン習字の本などひつぱりだしてきて練習しやうかと思ひしが。
さう、何を隠さうやつがれは、かつて通信教育でペン習字を習つたことがある。講座終了時はそれでも受講前よりはましな字が書けてゐた。今、当時の字を客観的に見てさう思ふ、といふ程度だが。
従つてお手本はある。
だが、そのお手本のやうな字が書きたいのか、といふと……うーん、どうかなあ。

実は憧れの字がある。
筒井康隆の字だ。

中学生の時だらうか、はじめて文春文庫で「大いなる助走」を読んだ。
この時、本の表紙が筒井康隆の自筆原稿だつた。装丁は確か山藤章二だつたと記憶してゐる。
この自筆原稿がいたくすてきでなあ……。
「ああ、ヲレもこんな字が書けるやうになりたい」
と、無謀にも挑んだこと数度。

ところでうつくしい字を書くには二つの要素が必要だ、といふ話を読んだことがある。
一つは器用な手先。
もう一つはうつくしいものをうつくしいと感じる心。あるいは「美意識」といふのかもしれない。

多分、筒井康隆の字を気に入つたといふ時点で、「うつくしいものをうつくしいと感じる心」はあつたのだと思ふ。少なくと字に関して好き嫌いはきちんとあるわけだ。
だが、悲しい哉やつがれは器用な手先を持たなかつた。

しかし嘆いてゐてもはじまらない。
ここはペリカーノ・ジュニアを手に入れたことを機に、あらためて憧れの文字に少しでも近づけるやう精進してみやうか。

……しかし筒井康隆の自筆つてどうしたら見られるんだらう。
「大いなる助走」を探すしかないか?

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