観客の躾
観客にも躾が必要だ。
先週の土曜日(11/20) 二ヶ月ぶりに歌舞伎座に行つた。
一階二等席の若干後方で昼の部を見た。
今月の歌舞伎座は顔見世といふことで、演目も配役も豪華である。悪いが、来月南座の顔見世よりずつとましといつてもいい。
そんなわけで、にこにこ見てゐたその時である。
「ほにやららや~」
ウソだらう?
二等とはいへ一階席である。
そのどこかから、かけ聲が聞こえてくるではないか。
くどいやうだが、一階席である。
しかも、かけてゐるのは一人だけではなかつた。
「ご両人(恋人役同士でもないのに)」
「ほにやららや~」
少なくとも二三名は不心得ものどもがゐる。
途端に暗澹たる心持になつたのも仕方のないことであらう。
ああ、歌舞伎座もここまで落ちたか。
以前、新橋演舞場で猿之助劇団の芝居を見てゐた時、一階席ほぼ最前列とおぼしきあたりから聲をかけてゐるご婦人があつた。
「うこーん」
といふ特徴のあるかけ聲は、かつて歌舞伎座の三階席でも聞いたおぼえがあつた。
猿之助劇団の場合ほとんどみな「澤瀉屋」なものだから役者の名前を呼ばないとあかんのか、と妙に納得した記憶もあつた。
だがしかし。
一階席である。
しかも最前列付近。
いつたい君はどういふ教育を受けてきたのかね、親の顔が見てみてえや。
と、イヤミの一つも云つてやりたいが、さういふ輩には通用しないんだらうねえ。
幕間に、その不心得ものどもの一人が、隣の席の御婦人と話をしてゐた。
「もう観劇歴は長いんですか? さうですか。手前は平成四年にはじめて見ましてね。ずつと三階席で見てたんだけど」
だつたら三階席で見てゐたらいいぢやあないか。
平成四年に見始めたのだとしたらもう十二年だ。ひとまはりである。
だが、おそらくその男性に「芝居見物とはかういふものなのだよ」と教へてくれる人はゐなかつたのだらう。あるいはゐたのかもしれないが、既に他人からの助言を聞き入れるだけの柔軟性を失つてゐたのかもしれない。
たれか云つてやつてくれ。
かけ聲は三階席か幕見からかけるものだ、と。
一階席や二階席のご見物は、三階席や幕見にゐるさうした人々に金を払つて聲をかけてもらふものなのだ、と。
……それともかういふ考へ方がそもそもあやまつてゐるのか?
だつたらあやまつてゐたつてかまふものか。
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