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Wednesday, 20 October 2004

実録! カーディガンのできるまで

といふわけで。
唐突にカーディガンを編むことにしたやつがれである。
いや、別に唐突ではなくて、前々から編みたいとは思つてゐたのだつた。
だが、編み始めては気に入らなくてほどいたりしてゐるうちにこものしか作らなくなつて今に至る。

ほんたうは写真を随時撮つていきたかつたのだが、生憎とデジタルカメラは壊れたままである。一度は撮れるが二度目は撮れない。二度目を撮らうとすると少し待たなければならなかつたりする。少し、といふのは三十分から一時間くらゐかねえ。

さういふわけで、ひとまづ写真はなし。
メリヤス編み等の編み方については既に「たた&たた夫の編物入門」といふこの上なくすばらしいサイトが存在するので、そちらをご参照くだされたく。

ところでカーディガンを編まうと思つた直接の原因は「風邪をひいたから」である。
風邪をひくとあたたかいものがほしくなりませんか?
なる。
といふ寸法だ。

また、先日 KNIT-OUTの帰りに立ち寄つたローワン・イェーガーで見かけたカーディガンがすてきだつた、といふのも理由のひとつであらう。
おそらくは綿の糸で編んだもので、身頃はふつうにメリヤス編みだが裾や襟がかのこ編みだつたのである。このかのこ編みのそろつた目がうつくしくてなあ……。

といふわけで、急遽ヲレもかのこ編みのカーディガンを編むぜつつ、といふことに相成つたわけである。

さて。
動機はこれでいいだらう。

次はパターンとお道具である。
パターンはこれまた以前から気に入つてゐた Debbie Bliss の _Knitting WORKBOOK_ に出てゐたかのこ編みのカーディガンにしやうと思つた。
が。
これねえ……使用糸が ROWAN の MAGPIE なんだよねえ。
そんな糸は手元にないし、同じやうな糸もまたない。
ROWAN の MAGPIE は……さうねえ、大雑把にいふと極太の糸、かねえ。140m / 100g くらゐ、と書いてもわからないしねえ。
とにかくやたらと毛糸があるくせに、かういふ時にぴつたりとくる糸がないといふのがなんとも情けない。
だから手持ちの糸が増えてしまふのだ、といふのはまた別の話。
今日までユニオンウールで安売りをしてゐるので注文してもいいのだが、かういふ時はすぐに編みたい。

そこで、決断。
ゲージだけとつて、パターンは自分で考へることにする。
できるのかね、そんなこと。
できるといふことにして先に進む。

一方、お道具である。
実はすでにカーディガンを編まうと思つて買つておいた糸がある。
たまたま立ち寄つたオカダヤで安売りされてゐた Debbie Bliss の Merino DK である。
カーディガンを編むつもりで買つてあるので量はおそらく十分。
ひつぱり出してきてスウォッチを編むことにする。
パターンや編み図が手元にないので、毛糸のラベルを頼りに針を選び編み目の数を割り出す。
ラベルによると針のサイズは 4mm。本邦でいふところの六号針くらゐであらう。場合によつては七号でもいいかもしれない。
丁度 _Teddy All-in-one_ のメイン部分を編み終はつたところであいてゐた六号針を手にとる。
編み目の数だが、ラベルには 10cm 四方で 22目の 30段とある。これはメリヤス編みの時のゲージであらう。
ガーター編みやかのこ編みは縦方向はメリヤス編みに比べて同じ段数を編んでも短い傾向がある。多分、横方向はそんなにかはらないだらう。

といふわけで、ひとまづ 36目作り目をしてスウォッチを編み始める。
この 36目といふのがどこからでてきたか、といふと、もうこれは「なんとなく」である。
元々は手のゆるかつたやつがれだが、かぎ針編みでレースを編み始めたころからものすごく手がきつくなつてしまつた。編んでも編んでもなかなかラベルや編み図どほりのゲージにならなくて困つた記憶がある。
今はわりと落ち着いてきてゐて、いい感じだ。それでもラベルにあるより少しきついかもしれない。
といふわけで、安全策をとつて少し多めに作り目をしてみたのである。

今回は特に参考にするパターンや編み図があるわけではないので、できたスウォッチから割り出したゲージが正となる。ゲージの編みなほしは必要ない。
気楽な気持ちでがんがん編み進む。
とはいふものの。
ローワン・イェーガーの店頭で見かけたのは裾や襟といつた部分にのみかのこ編みがほどこされたものだつた。ほかの大部分はメリヤス編みである。
その方がいいかなあ、とも思つたのだが、しかし、全部かのこ編みのカーディガンつていふのもあまり見ないので今回はとにかくかのこ編み。これでいくことに決定。

スウォッチは本来水に通してピン打ち整形してかはかしたものから取るか、はたまたやはりピン打ち整形してスチームアイロンをあてたものから取るかするべきなんだらうが……。この天気である。水に通してかはかすはまづ無理とみた。といふわけでスチームアイロン。たかだか 10cm 四方くらゐの編地のために。

取れたゲージは 22目 x 42段。やはりかのこ編みだと縦方向にはかなり編まないとダメだなあ。

それではパターンはどうするのか。
今回は今持つてゐる中で気に入つてゐるカーディガンのサイズにあはせる手法を使ふことにする。
確か橋本治の「男のニット 手トリ足トリ」でも最初のセーターはそんなやうにして編んでたやうな気がする。
話がそれるが、これから編物をしやうといふ人でもすでにがんがん編んでる人でも、この「男のニット 手トリ足トリ」は見かけたら入手しておいて損はない。編物しない人でも是非見てほしい。いい本なんだ、これが。橋本治自身が編んだといふ超絶編み込み模様のセーターを見るだけでも至福の気分である。でも一番いいのは「人に物を教へる」時にあるべき姿がそこにあること、かもしれない。

それはさておき。
パターンの採取である。
取り出したりますは通信販売で購入した黒いカーディガン。結構愛用してゐるので毛玉がすごかつたりするのがご愛嬌。さらに、オーヴァーサイズのものなので、Lなのに巨大である。
結果、後ろ身頃は 75cm ほど編まないといけないことが判明した。
75cm。都合一段につき 165目である。

………………

気がつくと、きちんと作り目をすませてゐるやつがれがゐた。

ちなみに作り目は Twisted German Cast On を採用する。
普通「指でかける作り目」は「Long Tail Cast On」と呼ばれる。それでも別によかつたのだが、気分で。
さらに、作り目とその後数段は四号針でガーター編みにすることにする。
かのこ編みはガーター編みと同じで別段編地がまるまることはない。
#メリヤス編みはまるまる。いやもーこれでもかつてえくらゐまるまります。

だから最初からかのこ編みでもよかつたのだが、ここはガーター編み。それもふつうにセーターなんぞを編む時に裾の部分のゴム編みを少し細い針で編む要領で編む。

都合八段ガーター編みをして、六号針に持ちかへていよいよかのこ編みの開始である。

ところで、こんな七面倒くさいことをせずに _Knitting WORKBOOK_ に出てゐた ROWAN MAGPIE のカーディガンに挑戦してもよかつたかな、とも思ふ。
糸がないなら作ればいい。つまり、Merino DK を二本取りにして編めばいいか、と。
だがものはかのこ編みである。かのこ編みといふことは、編地のうつくしさが命になる。編地のうつくしさは、編み手の技量はもちろんだが、なによりも糸のよさが不可欠なのだ。
特にやつがれのやうに技量のない編み手ならなほさらである。
Debbie Bliss の Merino DK はすばらしい糸である。ことこの糸に関しては不肖やつがれ、Debbie Bliss を完全に信じてゐるといつてもいいくらゐだ。
この糸で編めば、やつがれていどの腕前でもそれなりにそれなりなかのこ編みの編地を作ることができるのではないか。
そんな気がする。
だがその糸を二本取りにしたらどうだらう。
そこはちよつと自信がなかつた。

そんなわけで、一段の目数が増えるのも厭はず(いや、ほんとは厭つたけど)、一本取りでほそぼそと編み進むことにしたわけだ。


ところで編み方である。
両端にある一目は selvage stitch として、必ずメリヤス編みになるやうにした。
後々端をかがる時にその方がやりやすからうと考へてのことである。
実際はどうなるかわからないが、今回はひとまづこれで行くつもり。

さーて、あとはまづひたすら編むだけなのだが……。
といふわけで、次回はまちつと進んでからかなあ。
おそらくは二ヵ月後くらゐ(^_^;)。

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