Tinker, Tailor, Soldier, Spy
突然だが、「スタートレック ディープスペースナイン(以下「DS9」)」に出てくるガラックといふ異星人の仕立て屋が好きである。
カーデシア星といふ地球つてーか連邦つてーか主人公たちのゐる側とは敵対してゐる勢力圏の出身でありながら今や故郷と訣別して敵地で仕立て屋を営む彼は、元々はカーデシアの諜報部員で「オブシディアン・オーダー(ま、CIAとかMI6とかそんなやうなもんぢやらう、おそらく)」の一員であつた。
それが何故仕立て屋に、と、何かと謎ばかりの人物である。
「DS9」といふのはいはゆる宇宙ステーション(……なんかこの云ひ方、古い? 古いよねえ)の名前で、実は元々カーデシアの作つたものだつたのだが、いろいろあつて今は連邦の手にわたつてゐる。ガラックはそのDS9に住まひしてゐるのであつた。
ガラックはいはゆる主人公側の一人である軍医(いや、Dr.マッコイだつて「軍医」とか書かれてたからさあ)・ベシアとよく一緒に食事をしたりするのだが、熱血青年医師のベシアくんはガラックに「きみの云ふことは嘘ばかりぢやないか。一体何がほんたうなんだい?」なんてなことを訊いたりする。
そのときガラック少しもあはてず
「すべてほんたうですよ。特に嘘の部分がね」
みたやうなことを答へる。
うーん、いい。
あ、今あちこちから「あんたバカァ?」「バッカぢやなかろか」「アホちやう、自分」といふ声が……(/_;)。
もとい。
世の中とにかく「わかりやすく」が主流になつてゐる。
なんでもかんでもわかりやすくなければならないらしい。
でもなあ。
わからないもの、わかりづらいものの方がおもしろい、と、さういふこともあると思ふんだがどうだらうか。
時折読んでゐてはつきり理解はできないものの、「ここにはなんだかわからないがおもしろいことが書いてあるらしいっっっ」と思ふ書物に出会ふことがある。
また、やつがれに限つていふと、将棋や囲碁の対局など、見てゐてもさーつぱりわからないけれども、なんだかおもしろさうなことがおこつてゐるらしいといふ、それだけで一時間半を超える時間、ぼんやりとTVの画面を眺めたりできる。
もひとつやつがれに限つていふと、舶来のあみもののパターンなどには編み図がなく、編み方が文章で延々書いてあつたりして中には全体像がイメージしづらいものも多々あるのだが、それはそれでまた楽しい。読み解ければうれしいし、読み解けなくてもそれなりに。
負け惜しみ? さうなのかもしれない。
さうなのかもしれないが……世間には「わかりやすく」がはびこりすぎてゐる。
たれか掃除をしてくれないものか。
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