安いよ安いよっっ
昨日で客との契約が切れて、次の客との契約は来週頭から。
そんなわけで久しぶりに社に戻つた。
途中、小さな書店の店頭にワゴンが置かれ、店員がゐてものを売つてゐるのを見かけた。
もう書くまでもないだらう。
ハリー・ポッターの最新刊である。
よく見なかつたが上下巻をビニールでパッキングしたやうな感じで売られてゐた。
別に社に戻つたからといつて何もすることがないので三時であがることにした。
地元の駅に降り立つ。
高校生のころ、この駅前にはそれなりの書店が二軒あつたのだが、どちらもなくなつてしまつた。一軒だけ書店と呼ぶのもどうかといふやうな小さな店が残つたが、この店、裏通りにある。
その店が表通りにやはりワゴンを出してなにやら売つてゐる。始業式帰りだらうか女子高生とおぼしき子が一人、店員とお喋りしてゐる。
ことはるまでもあるまい。
ハリー・ポッターだ。
かつて柴田くんこと柴田元幸の本で、「我が意を得たり」と膝を打ちたくなるやうな一文を読んだことがある。
「本屋やレコード屋が好ましいのは、店に入つても店員が寄つてこないこと。「今日のお勧め本はこれですよ」などと売り込んだりしないこと」
と、柴田くんは書いてゐる。
そのとほりである。
本屋やCD屋(……うーん、やつぱり「レコード屋」の方がしつくりくるなあ)、これに文房具屋をくはえてもいいだらう、かうした店が好ましいのは、店内に入つても店員が寄つてこないことである。そして、「お客さまにはこちらがお似合ひか、と」とか「今これが売れてるんですよ」とか、余分なことを云つてきたりしないことだ。
文房具店はともかく、大きな書店やレコード店には週間ランキングが貼り出されてゐたり、あるいは売れ筋の商品は平積みになつてゐたりするから店員があれこれ云つてこなくてもすぐわかる。
それに……おそらく服やなにかとちがつてよみものや音楽といつたものはその人に似合ふかどうか、その人の意に沿ふかどうかといふのはちよつとやそつとぢやわからないものなのだらう。
まあ店頭売りくらゐ、かつて紀伊国屋本店の前でやつてたアレみたやうなものだらうといふ話もある。
だが何かがちがふ気がした。
それだけのことである。
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