優勝させても追はれる人
「週刊文春」の車内吊り広告で、広岡達朗の名前を見る。
「渡辺恒雄の脳内改革が必要だ」とか説ひてゐるらしい。
大丈夫なのか、広岡?
広岡達朗といふと忘れられないまんががある。
いしいひさいちの「がんばれタブチくん」だ。
かつては我が家にも何冊かあつて、「世の中であり得ないことを「タブラン」すなはち「タブチのランニングホームラン」といふ」などと描いてある四コマまんがを読んで大いに笑つたものだつた。
しかし、いつまでも記憶に残つてゐるのはさうした笑へるものではない。
もちろん詳細にわたつて覚えてゐるわけではないが、以下のやうな内容である。
その四コマまんがで、広岡は物置の片づけか何かをしてゐて、ふと昔自分がつけてゐた日記帳を手にとる。自然と読み進むうち、突然いきり立つて押つ取り刀ならぬ押つ取り植木鋏で他家の庭にある植木を垣根越しにめちやくちやにして去るのだつた。
他家とはすなはち川上哲治宅である。
四コマめでめちやくちやにされた植木を見て「犯人はわかつてゐる」といふやうなことを川上は云ふ。
それだけのまんがなのだが、なぜか忘れられない。
「犯人はわかつてゐる」といふことは川上に身に覚えがある、といふことだ。
読売のV9時代、ましてや広岡の現役時代なぞ知るよしもないが、さまざまなことがしのばれるまんがである。
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