もう二度と行けない
来日したら絶対演奏会に行きたい音楽家が三組あつた。
ひとつはいつも書いてゐる独逸の蛙の王子様五人組。
それから仏蘭西のベーシスト六人組(実際はもつとゐるんだが、その中で都合のつく六人でまはつてゐるらしい)。
そして独逸人の指揮者。
さう、先日他界してゐたことが判明したカルロス・クライバーである。
クライバーといへば来日するといつてはすつぽかし、実際に来るとなると一枚五万円もするやうなチケットが飛ぶやうに売れてしまつて入手困難になつてしまふ。
まあクラシック音楽家にはありがちといへばありがちな話なのだが、しかし、心底「行きたい」と思ふ向きには「なんでなんだよーう(>_<)」と地団駄踏んでしまひたくなる。
さういへば、かつて楽団にゐた折、今は亡きカラヤンを信奉してゐる先輩が来て、最後の来日の折、やはりチケットが手に入らず、それでもあきらめきれずに演奏会のあひだずつと劇場の外にゐた、といふやうな話をしてくれたことがあつた。
わかるなあ。
クライバーのどこがいいのか、といふと。
「この部分は「Marie, Marie」といふやうに演奏すべきだ。きみたちのは「Therese, Therese」だ」
といつた話、とか。
なんなんや、それ。
あと。
まつたく個人的な話なのだが。
かつて高速バスに乗つて上京した折、とんでもない渋滞に巻き込まれてしまつた。
この時聴いてゐたのはベートーヴェンの七番。
別に曲が悪いわけではないと思ふのだが、すつかり車酔ひしてしまつた。
この後しばらくこの曲を聴けなくなつてしまつてゐたのだが、ある時聴いてみたら聴けるぢやないか。
ふと見るとカルロス・クライバー指揮とある。
また楽隊でいろいろあつて聴けなくなつてしまつたブラームスの四番。
これを聴けるやうにしてくれたのもクライバーであつた。
あとにかつと笑つたところが reptile 系ですてき、とか(ばか)、
さらに犬歯が光りさうなところがもつとすてき、とか(ばかばか)、
いろいろあるのだが。
「来日したら行かう」は夢。
かなはぬ夢になつてしまつた。
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