ささやかな野望を胸に
絶対達成することはないだらうと思つてはゐる。
だが、まあ、想像したりここに書いたりするくらゐはいいだらう。
ささやかな野望。
それは
「芝居を見ながらあみものをする」
である。
「芝居を見ながらタティングレースを作る」
でもいい。
二号くらゐ前の _Knitter's Magazine_ にもそんなやうなことがコラムがあつた。
演奏会や子供の運動会などであみものをしたい、といふやうなことが書いてあつた。
無論、演奏会の場合は編み棒のかちかちいふ音が disturbing だらう、とも書いてある。
でも、わかるんだなあ。
実は前々から芝居を見ながらあみものをしたい、と思つてゐたからである。
なぜ、と問はれてもこたへられない。ただなんとなく、だ。
三味線や鼓の心地よい音のする中、絢爛豪華(ばかりでもないかもしれないが)な舞台を見ながらお気に入りの毛糸であみものをする……
うーん、考へるだに贅沢な気分である。
確か中村屋だつたと思ふが、かつて歌舞伎座の一等前の席(い列、といふ)でひたすら下を向いてあみものをしてゐる婦人がゐたことがあつたのださうな。
中村屋、なんとかこの婦人の視線を舞台に向かせやうと車輪になつたが、結局最後までその婦人が舞台を見ることはなかつたのだといふ。
一番前の席でそれはちよつとどうかと思ふが、二階桟敷なんかだつたらいいんぢやないかなあ。
ああ、やつてみたい。
やつてはみたいが……しかし芝居さんを愛してゐるのできつとやることはあるまい。
ささやかなやつがれの野望である。
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