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Monday, 26 July 2004

Elegance の神様

世の中にはたくさんの「神様」がゐる。
本邦では「八百万」といふくらゐなので、あらためて書くほどのことでもないのだが。

しかしたとへば籠球の神様がマイケル・ジョーダンであり、Palm界の神様が山田達治であり、そして役者の神様が六世中村歌右衛門であるやうに、この世には Elegance の神様がゐる。
いや、ゐた。
あるいは銀幕の中には今もゐる。

かくして。

買ひも買つたり、BOX の中身も含め DVD を八枚。うち一枚は MGM ミュージカルものだが、残りはすべて、

フレッド・アステア主演作品

である。

BOX はアステア・ロジャーズものが五本。それと「恋愛準決勝戦」と「踊るニュウヨーク」。
アステア・ロジャーズものについては題名見るだけで歌が出てくるほど。でも映像はほとんど見たことがない。
もともと映画はあまり見ない方である。
映画より芝居の方が好きだからだらう、おそらく。

しかしアステアは別。
全身映しノーカットの踊りは圧巻といふほかない。
たまたまTVで放映してゐるのを見てしまふと、そのあひだ中なにもできない。
歌の文句ではないが、まさに I just can't take my eyes off of him. である。
試験中等に幾度ひどいめにあつたことか。
しかし見てゐる最中は至福の時である。なにものにも変へ難い。

今回特に楽しみなのは「恋愛準決勝戦」と「踊るニュウヨーク」。
「恋愛準決勝戦」はアステアが天井で踊る場面が有名だが、帽子かけと踊る場面も捨て難い。
ステッキといい、この帽子かけといい、アステアの相手はまるで生きてゐるもののやうに踊る。
ジンジャー・ロジャーズと別れた後のアステアにはこれといつた相手役がゐない(「踊るニュウヨーク」で一緒だつたエレノア・パウエルなんかはよかつたかもしれないが)。
だが、ステッキ、コート、帽子かけといつた生物に非ざるものが best partners だつたのかもしれない。

「踊るニュウヨーク」は上にも書いたとほり、エレノア・パウエルとの「Begin the Beguine」だらう。
かつては「ザッツ・エンタテインメント」でしか拝めなかつた「Begin the Beguine」が見られるとはなあ(T-T)。
これについてはコニー・ウィリスの「リメイク」に詳しい。
#そしてこの本にはなぜジーン・ケリーではダメなのか、がちや~んと書いてある

アステアは自身にクラシックバレエの素養がないことを気にしてゐたといふが、そこからあの優雅さが生まれてきたのでは、と邪推する。
アステアはこの世の重力・引力を自由自在に操れるのではないかとさへ思へる。
まさに神がかつてゐる。

ディートリヒやヌレエフのことばを待つまでもなく、また「のっぽさん」こと高見映の著作にあるが如く、
アステアほどの踊り手はゐない。アステアを見た眼には彼以外の人間の踊るタップダンスは「タップダンス」ではない。

ああ、早く見たいよ~う。
しかし落ち着いて見られるのは早くてこの週末だらうか。とほほ。

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