蛙とあみもの
むかしむかし、「セサミ・ストリート」にまだ吹替版などなかつたころ、Kermit the Frog の喋りは脅威であつた。
早かつたのである。
といふわけで、Kermit だけでなくて、えうするに Jim Henson があやつつてゐたマペットに云へること、といふ話もある。しかし、やはり一等は Kermit であらう。
以前、過去の日誌にも書いたが、かつて「セサミ・ストリート」関連の商品を扱つてゐる店舗に赴いても、Kermit のものだけは絶対なかつた。なぜかといふと、Jim Henson にとつて Kermit は特別だつたからである。
Jim Henson が最初に作つたマペットは、母親の形見を素材にした Kermit the Frog であつた。
「Kermit は自分自身である」といふやうな発言もあつた。
Jim Henson 没後しばらくして、Kermit を使つた商品が大量に出回るやうになり、どんな気持ちになつたかは察してもらへるものと思ふ。
それはともかく「かへる」である。
かへるとあみものとのあひだにどのやうなつながりがあるのか、といふと、えー、あみもの系の blog を巡回してゐるとわかつてくるのだが、えうは、編んだものをほどくときの「Rip it」とかつていふのがかえるの鳴き声である「ribbit」に似てゐる、といふことである。
普段はほとんど編んだものをほどくことはない。
手の速い方ではないので、なんとかほどかずにごまかすことの方が多い。
だが今回はさうはいかなかつた。
少し前からあじろ編みといひバスケット編みともいふ編み方でくつ下を編んでゐる、といふ話を書いてきた。今日、やつと後付けの踵を編むところまで来た。しかし、くつ下はあまりにもデカ過ぎた。これは如何様にもごまかしきれないし、化繊混だからうまくフェルト化できるかどうか自信がない。もともと洗濯機で洗ふことを考へてゐる糸だから、洗つてもちぢむことはなからう。
ここまできて、といふ思ひが強かつた。
バスケット編みははじめての上、くつ下はゲージをとりにくいので、まづは編んでみた。常であれば途中まで来たら「あ、これは大きすぎる」とか「小さすぎる」とかわかるのだが、バスケット編みに限つては、「……でも世の中のバスケット編みのくつ下つてなんだかものすごく大きく見えるよな」といふ頭があつた。編み方の都合でさう見えるのだと思ふ。
バスケット編みは、おそらくドミノ編み同様、普通に編むよりも時間のかかる編み方であると思はれる。
今日だつて、もう後少しでつま先部分に入れるといふところまで来てゐるといふのに、踵にかかるまで異様に時間がかかつた。
それをほどくのである。
……大袈裟な、と思はれる向きもあらうなあ。
なんたつて世の中、40番手のレース糸で編んだかぎ針編みの大作ドイリーでさへ、完成直前にまちがひを見つけて全部ほどいてしまふなんてな人間がごろごろしてゐるのである。
くつ下片方をほどくのにそんなに躊躇するやうなことか、と思はれるだらう。
ごもつとも。まことにごもつともである。
そんなわけで、全部ほどいた。
少し小さく作り直すことにする……つもりはなくて、もうこの糸で同じやうなくつ下は編まない予定である。
使用糸は何度も書いてゐるが、Regia Cotton Surfer。この編地が実に気持ちいいのである。ちよいと寝巻きにしたいやうなやわらかな編地になる。これは今編んでゐるやうないはゆる texture kntting な感じぢやなくて(今の編み方は、表はメリヤス編み、裏はメリヤス編みと裏メリヤス編みを交互に一目ずつである)、メリヤス編みの多い編み方の方が糸のよさが生きるのではないか、といふ気がするのである。
それも、できればくつ下ぢやなくて、マフラのやうな顔や首のそばにくるやうなものがいいやうな感じだ。
いづれにしても、この糸では何か別の作品を作るし(くつ下かもしれないしさうではないかもしれない)、バスケット編みのくつ下はほかの糸で再度挑戦するつもりである。
さう、バスケット編みのくつ下には明日にでも再度挑戦開始の予定だ。
しかしその前に「くりくり」と「まきまき」に出動要請しなければならない。
初めての出動要請である。
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