子曰く
君子豹変す。
幼いころ、この意味がよくわからなかつた。
「豹変」の意味がわからなかつたのか、といふとさにあらず。
いや、まあ正確には理解してゐなかつたのかもしれないが、君子人は変はり身が早い、といふ意味だらうくらゐのことはわかつてゐたと思ふ。
わからないのは、「なんで君子は変はり身が早い」のか、といふことだ。
「変はること」に対して否定的な考へ方を抱いてゐたのが原因だらう、と、今では思つてゐる。
たとへば、長いこと「みいちやんはあちやん」に対して冷ややかな印象を抱いてゐた。
「みいちやんはあちやん」といふのは実に変はり身が早いものである。
つい先日までは甲といふ芸能人を追ひかけてゐたかと思へば、今日はもう乙といふアイドルに夢中だ。
さうした移り気な人々を許せなかつたわけだ。
バカだねえ……。
まあ、子供といふのは自分では気がつかなくても存外潔癖なところがあつたりする。
よく外でタイル状の道の上を歩いてゐる時に、同じ色のタイルのあるところだけ踏んで歩かうとする子供をみかけるでせう。
別にタイルなんてどの色でもいいぢやないか、といふよりは、同じ色のタイルにこだはることなんかないぢやないか、と思ふ。
おそらく当の子供も半ばはさう思つてゐるのではないかといふ気もするが、しかし、ここは譲るわけにはいかないのである。親にせかされてしぶしぶやめるが、なにかの拍子にまたはじめたりする。
まあそんなものとお考へいただきたい。
ところで豹変する君子といふのは、自分の非を認めたら即態度を改める、といふものである。
考へてみたら、そんなことができる人といふのは早々ゐない。
たまにゐるが、人から「風見鶏」などと陰口をきかれることもある。
でも、自分が悪かつたら、やつぱり「悪かつた」と云ひ、すぐに改めるのがほんとだらう。
といふわけで、世の中不況で企業がうまくいかないのは、この「君子豹変す」を体得してゐないからだ、といふのは少し理論がふつとびすぎてゐる……かな?
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