My One And Only
浮かれてゐる。
めづらしく浮かれてゐる。
その理由はタティングシャトルである。
誕生日を名目に、GR-8 Shuttle を注文した。
素材は黒檀。ボビンは一つ用である。
我が家にごろごろしてゐるプラスティックのボビンにあはせて作つてもらつた。
まさに My One And Only である。
少し前に、Snowgoose で GR-8 Shuttle を購入した。
この時はシャトルワインダといふ一般的に市販されてゐるタティングシャトル(といつても見たことのない向きも多からうなあ)に糸を巻く道具を買ふのが目的だつた。
とにかく去年の暮れから先月くらゐまで怒涛の日々を送つてゐた。
それでも通勤バスの中でのタティングは続けてゐた。
だが、困つたことがあつた。
シャトルに糸を巻いてゐる時間が惜しいのである。
帰りは毎日午前様。朝は常と変はらぬ時間に出勤。
さうなると糸を巻く時間は必然的に限られてくる。
そして、糸を巻く時間も惜しい。
そんなわけで。
それならシャトルワインダを手に入れた方が早いんぢやないか。買へば絶対使ふものである。
といふわけで、まづはシャトルワインダを「ぽちつとな」した後、ふと気になるものがあつた。
それが GR-8 Shuttle である。
ボビンを使用するシャトルを使つたこともある。
Aero のシャトルがいいといふので購入してみた。シャトルの先にかぎ針が作りつけてあつて、一々かぎ針をもちなほさなくてすむといふ、実に便利さうなシャトルである。
しかし、買つたままでは使へなかつた。自分で紙やすりをかけて少し端をなめらかにしないと糸がひつかかつて仕様がない。特に絹糸を扱ふ時には閉口した。
どうやらAero のシャトルがよかつたのは過去の話であるらしい。
でもボビン使ひのシャトルには惹かれてゐた。
なんといつてもボビンを交換すれば簡単に糸を換へることができるのである。
いくつもいくつもシャトルを持つ必要がなくなるではないか。
そんなわけで、結局 GR-8 Shuttle も「ぽちつとな」してしまつた。
ところがやつてきた GR-8 Shuttle は難物であつた。
リンク先をたどつていただければおわかりになるかと思ふが、このシャトルは万人向きのシャトルとはいへない、とある。
そのとほりだつた。
使ひ方の説明もあるのだが、なかなかうまく糸が出てきてくれないのである。
どうしたもんだらう。
やはりこのシャトルはやつがれ向きではなかつたのでは。
あきらめるしかないのか、と思つた時、ふと思ひ出したことがある。
はじめてタティングレースに挑戦した時のことだ。
たまたま手芸屋で見かけたタティングシャトルとタティングレースの本を元に、独学ではじめたやつがれを待ち構へてゐたのは、「どうやつたら左手の糸をタティングレースから出てゐる糸に絡ませることができるのか」といふことだつた。
タティングレースをご存知ない方はおわかりにならないかもしれないが、タティングレースはシャトルに糸を巻いて行ふ。左手に糸をかけて、右手に持つたシャトルを左手の糸のまはりにめぐらせ、シャトルからの糸を左手の糸に絡ませる。だが、実際には左手の糸をシャトルの糸に絡ませなければならない。
何が何やら、でせう?
話は簡単で、実は英語で云ふところの flip を行へばいいのである。すなはち、左手の糸とシャトル糸を反転させる。さうすればシャトルの糸が芯糸になつて左手の糸を絡ませることができるのである。
だが、本からそれを読み取ることはやつがれにはむづかしかつた。
どうしても左手の糸が芯糸になつてしまふ。
悩むこと二三日。
ある時ぱつとひらめいた。
さうか、結び目を反転させればいいのかっっっ。
それはあたかもヘレン・ケラーが「water」を理解する場面のやうだつた。多分。
かうしてやつとやつがれはスティッチを作ることができるやうになつたのだ。
なぜひらめいたのかは謎である。あれこれ試行錯誤してゐるうちになんとなくその瞬間がやつてきたのだつた。
さうだ、きつと GR-8 Shuttle もこの伝なのだ。
かくして格闘すること二三日。
たうたうやつがれは GR-8 Shuttle のすばらしさに気がついたのである。
うーん、なんてすばらしいシャトルっっっ。
ところで Snowgoose でこのシャトルを頼む時には素材は指定できなかつた。「素材はこちらに選ばせてね」と Snowgoose の Webページにある。
やつてきたのは cocobola だつた。
辞書には「紫檀の一種」とある。主に家具に用ゐられるともある。
これがなかなかにしつとりとした手触りのよいシャトルである。
そんなわけで、「紫檀の次は黒檀だらう」と単純に考へて、シャトルを注文した。
黒檀にはも一つ理由があつて、あみもの系blogなんぞをみてゐると黒檀の編み針を使ふ、といふやうな記述がたまに見受けられるのだね。やつがれは普段「匠」を愛用してゐるが、黒檀……なんとなくよささう。
それで、どんな感じなのかと興味があつたのである。
注文を受けてくれたのは Shuttle Brothers の Randy Houtz さんであつた。
いやー、ええ人やつた。こちらのたどたどしい英文にも丁寧に応対してくだすつた。
ありがたい。ほんたうにありがたい。
シャトルと一緒にタティングレースの本も注文した。
_Tatting the GR-8 Self-Closing Mock Ring_ がそれである。
Gary & Randy の Houtz 兄弟は、Self-Closing Mock Ring といふ技法を編み出したことでも有名である。
この本は、その Self-Closing Mock Ring、略して SCMR に特化したタティングの本なのである。
自費出版みたやうな感じで前面これモノクロコピーといつた趣きなのだが、これがまたいいんだ。
ちよつと見はむづかしさうだが、説明に従つて作つていけば、 Voila! つてな寸法である。
また、この本ではさまざまな色を使ふことを提唱してゐるやうに見受けられる。どうも Shuttle Brothers は白や生成りの糸はあまり使はないらしいのだ。
さういへば「tatting」で検索かけて見に行くと、実に colourful な作品が多いやうに思ふ。
そんなわけで、Anchor の段染め糸をひつぱり出してきて、_Tatting the GR-8 Self-Closing Mock Ring_ に出てゐる三角形のモチーフを作つてみた。
いい感じである。
そんなわけで、この二つのシャトルを使つて、サンプラ作りに励みたい。
……そのまへにパターンつくらな。とほほ。
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