My Photo
October 2024
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

Thursday, 10 October 2024

9月の読書メーター

9月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:879
ナイス数:36

中学生から知りたいパレスチナのこと中学生から知りたいパレスチナのこと感想
パレスチナのことに限らず、「ものごとはこうやってとらえる/考える」という本かと思う。ほかの地域の問題、地域にかかわらずなにか問題だと思われるものはこうして考えていくといい、というような。既知のことや自分の専門に引きつけて考えることの弊害もないわけではないが、それは複数人集まって意見を交わすことで解決できるのかもしれない。
読了日:09月02日 著者:岡真理,小山哲,藤原辰史
きりしとほろ上人伝きりしとほろ上人伝感想
美文とはなんだろうか。そう思ってWeb検索をかけたところ橋本治が美文について書いた記事に出会い、そこに「美文の要素がすべて入った」作品といってこの「きりしとほろ上人伝」が紹介されていた。それを意識しつつ読んだ。完結平明わかりやすい文章のもてはやされ、「作家はなにを書きたかったのでしょう」と問われる文章とは真逆の、作者自身が自分から距離を置いて書いた文章を存分に楽しんだ。
読了日:09月12日 著者:芥川 竜之介
婦系図婦系図感想
新派だと(新派でしか見たことがないが)このお蔦のはかなげな美しさが出ない。鬼灯を鳴らして蛙とやりとりするような稚気がない。め組の活躍するところもお蔦がとっちゃうし。舞台だと湯島の境内だけでお蔦を終わらせることはできないんだろう。最後はモドリというかぶっ返ったかのような主税のようすが芝居のようでおもしろい。登場人物を表現するのに何を身につけているかで表すのも趣深いが、知識がなくてよくわからないのが悔しい。再読。
読了日:09月17日 著者:泉 鏡花
惑亂 新鋭短歌シリーズ惑亂 新鋭短歌シリーズ感想
短歌と俳句のちがいとはこういうものなのか、と思う一方で、自分の読んだ句集や詩歌集はこの歌集よりすこし新しいものなのかもしれない。この歌集に掲載されている作品の方がどことなく嫩い感じがする。また、俳句の方が客観的(とでもいうのか)で、個人の思いやなにかから遠いからそう思うのかもしれない。歌の方が近いだろう。
本当は紙の本でほしくて日本の古本屋さんでずっと見張っていても埒があかなかったのでKindleで。でもこれは紙で欲しい。ネット歌枕発掘ブロジェクトでもらったAmazonポイントで購入した。
読了日:09月18日 著者:堀田 季何
フラワーズ・カンフーフラワーズ・カンフー感想
小津夜景の本は随筆もずいぶんと読んだしどれもとても気に入ったけれど、やはり好きなのは夜景の句なのだなあとしみじみ思った。それと、この本にも『花と夜盗』にも俳句以外の様々な形態の詩(だろう)が掲載されているのも楽しい。なにか自由なのだ。句も本の形式も。
これも本当は紙の本でほしいところだがなかなか見つけられずにいるのでKindleで。
読了日:09月19日 著者:小津夜景

読書メーター

Sunday, 08 September 2024

8月の読書メーター

8月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1967
ナイス数:44

カラマーゾフの兄弟〈中〉 (新潮文庫)カラマーゾフの兄弟〈中〉 (新潮文庫)感想
高潔な人物とはどんな人をいうのか。ゾシマ長老は高潔だったのか。生前長老はドミートリイの為すだろうことを憂えてアレクセイに告げるけど、長老の死後すぐに腐臭がしたのはその予測が間違っていたということなのか。
過去に読んだ時はとても読みづらかったように思うが、そして劇的な登場人物が多いのにはちょっと疲れてしまうが、このまま下巻にうつりたい。
読了日:08月11日 著者:ドストエフスキー
カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)感想
大審問官がつらいという話だが、ホフラコワ夫人のお喋りの方が断然だるいし、検事の話にも「なんの証明にもなってないじゃんよ」とうんざり。下巻に来て「もしかしたら読み終わらないかも?」と思うほど。「なぜ少年たち? 続篇にそなえて?」と疑問に思いつつ、これって父親からの愛情の有無と父と子どもとどちらが死ぬか(まあスメルジャコフは死ぬわけだけど)それも殺人か病死かという対比のようなものがあるのかなと思ったりした。過去になんであんなに読むのに苦労したのかわからない。全体的にはそれくらいおもしろく読んだ。
読了日:08月23日 著者:ドストエフスキー
父が子に語る科学の話 親子の対話から生まれた感動の科学入門 (ブルーバックス B 2268)父が子に語る科学の話 親子の対話から生まれた感動の科学入門 (ブルーバックス B 2268)感想
理科や科学系の科目のテストを受けるとする。教師がつけたまるやばつとともにテストが返ってくる。そうしたら「絶対に正しい科学というものがあるんだな」と思うだろう。理科に限らないけれど、なんとなくだが学校で教わったことや本で読んだことが「実は正しくないかもしれない」という状態に人は(主語デカい)不安を覚えるのじゃあるまいか。この本を読んでいてそんなことを考えた。
読了日:08月28日 著者:ヨセフ・アガシ
てんとろり 笹井宏之第二歌集てんとろり 笹井宏之第二歌集感想
本名で新聞に投稿していたという歌を正気とするならば、筆名で作っていた歌は狂気(というと大げさか)だろうか。見えないものが見えている。聞こえないものが聞こえている。味わうことのないものを味わっている。歌人(広く詩人といってもいい)とはそういたものなのかもしれないが、この二分された歌を見比べると強くそう感じる。
読了日:08月29日 著者:笹井 宏之
中学生から知りたいウクライナのこと中学生から知りたいウクライナのこと感想
何よりもまず「知りたい」と思うことが重要なのだと思った。云い尽くされたことではあるものの、いまは情報過多で自分の関心を引く情報だけを取り込もうとしてもそれさえ全部は受け止められない。無関心でも世の中が広めたいと思っている情報は否応なく目に留まる。そんな中で、知りたいと思い、情報を追い、自分で考えることが大切。この本で云っていることはそういうことなのだと思う。ただ、知りたい気持ちや好奇心を抱き続けるには相当のエネルギーが必要で、それをどう充填していくかが課題かなぁ。
読了日:08月30日 著者:小山哲,藤原辰史

読書メーター

Wednesday, 07 August 2024

7月の読書メーター

7月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1459
ナイス数:30

えーえんとくちから (ちくま文庫)えーえんとくちから (ちくま文庫)感想
音読はしていないけれど、おそらく口に出したらやわらかい音の多い短歌が並んでいる気がする。透明感ややさしさの謎はそこにもあって、もちろん決してそれだけではなくて、何度でも読み返したい歌集だと思った。TikTokとTwitterで開催されていたネット歌枕発掘プロジェクトで歌集を読むよう勧められ、手にした中の一冊。
読了日:07月03日 著者:笹井 宏之
カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)感想
読み始めてあまりのおもしろさに止まらなくなる。以前読んだときえらく苦労した記憶があるんだが、何に引っかかったのだろう。キリスト教かなあ。今回も確かに「キリスト教がわからないと難しい」と思うことがあったが、とにかく登場人物がどうなるのかを知りたくて読み進めてしまう。ドストエフスキーの描く登場人物に自分を投影しなくなったからかなあ。年を取ったし。若い頃は「これは自分の未来の姿だ」と思い耐えられなかったものだけれど。野田地図の「正三角関係」が『カラマーゾフの兄弟』を題材にしていると聞いて読むことにした。
読了日:07月15日 著者:ドストエフスキー
はじめての短歌 (河出文庫 ほ 6-3)はじめての短歌 (河出文庫 ほ 6-3)感想
みんなだまされている。穂村弘は総務部で役付きにまでなった人だ。そんな、「蝶のくちびる」が落ちてないかどうか探しているような人である訳がない。というよりは、そういう面もあり、そうでない面もあり、なのだろう、本書にもあるとおり。でもやっぱりみんなだまされているような気がしてならない。もちろん自分が一番だまされている。
読了日:07月18日 著者:穂村 弘
言語を生みだす本能(上) (NHKブックス)言語を生みだす本能(上) (NHKブックス)感想
20世紀も押し迫ったころの著書のため、コンピュータにとって音声認識が大変むつかしいという話が書かれている。いまだとSiriやアレクサはどうかな、と思うが、多分、Siriやアレクサには会話はできない。二、三回前にこちらが云ったことや自身が云ったことも覚えていないし、ましてや昨日伝えたことなんて、だろう。そこはひょっとしたら情報の保護という考え方もあるのかもしれないけれど。そんな感じで現状と照らし合わせつつ、楽しく読んだ。言語とかことばとかになぜだか惹かれる。
読了日:07月28日 著者:スティーブン ピンカー
ひとさらい 笹井宏之第一歌集ひとさらい 笹井宏之第一歌集感想
『えーえんとくちから』を読んで、ほかの作品も読んでみたいと思い手にした。『えーえんとくちから』に掲載されている作品も多いが、こちらの方が攻めた感じの作品が多く、こちらを先に読んでいたらまた印象も違ったろうと思った。以前もよそに書いたけれど、詩集とか歌集とか句集とか、すてきな装丁の本もよいけれど、常に持ち歩いて手元に置いておきたいものもあって、これはそんな歌集。
読了日:07月31日 著者:笹井 宏之

読書メーター

Monday, 15 July 2024

再開

編むことができるやうになつてきた。
いろいろ記録を見ると、どうやら去年の今頃から腱鞘炎がひどくなり、編めなくなつてゐたやうである。
痛いのは左手の薬指。
左手なのに、と思ふが、棒針編みをしてもかぎ針編みをしても左手といふのは案外使ふものだ。さういふことにあらためて気がついた。
タティングもできなかつた。
これまでも腱鞘炎で編めなくなることは二度あつて、一度は左手でもう一度は右手だつた。
どちらも湯舟の中でマッサージをし、薬を塗つて安静にしてゐたらさう長くかからずによくなつたので、今回も高を括つてゐた。
するといつまでたつてもよくならない。
このblogにも十月ごろに「毛糸を処分するやうだらうか」と書いてゐる。

よくなつてきたのは五月の半ばくらゐだつた。
去年の今ごろ編み始めたハマナカのポームで編むニッタオルを再開してみたら、さほど痛みを感じなかつた。
痛くなつたらその日はもう編まず、翌日編めさうだつたら編むをくり返してゐたらいつのまにかハンカチサイズのニッタオルが完成してゐた。
編んでゐるといふことは安静にしてゐないといふことで、腱鞘炎は悪化するのではないかと思つたがさうでもなかつた。
反対に、だんだんよくなつていく感覚があつた。
なにしろある日気がついてみたら両手で手ぬぐひをしぼつてゐたくらゐである。
これまでは手ぬぐひを洗つても、右手でしぼつてゐて、桜木花道ではないが「左手は添へるだけ」だつたのだ。

その後、もう一枚ニッタオルを編み、ハマナカのポームでくるぶし丈のくつ下を二足編んだ。
まだ痛みはあるものの、手もだいぶ握れるやうになつてきたし、今後も様子を見ながら編んでゆきたいと思つてゐる。

毛糸を処分しなくてよかつたかもしれない。

Sunday, 14 July 2024

6月の読書メーター

6月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:969
ナイス数:27

Professor at Large: The Cornell Years (English Edition)Professor at Large: The Cornell Years (English Edition)感想
ジョン・クリーズは劣化してしまったという呟きを見かけ、その論拠と思しき記事を読み、この本を読み返した。一番古い講義録が約25年前、新しいのは7年前の対談の記録か。いま読み返しても刺激的だし、古さや劣化は感じない。ただこの頃から「知り合いの頭のいい人はみんなことばを文字通りに受け取ることはない」と云っている。劣化したと云われる所以は「今はなんでも文字通りに受け取る人が多くて」という発言にあるのだろうと思うからだ。多くなったわけじゃなくて、そういう人がいることが明らかになっただけかなと思うんだけどな。
読了日:06月01日 著者:John Cleese
中澤系歌集 uta0001.txt中澤系歌集 uta0001.txt感想
一読しただけで忘れられない歌の数々。短歌や俳句は短いから覚えやすいかというと必ずしもそうではないと思うのだが、この歌集に出てくる歌はなぜか忘れられないものが多い。完璧に覚えているわけではなくても(それはそれで申し訳ないが)、記憶から消えないのだ。
読了日:06月07日 著者:中澤系
万葉集に出会う (岩波新書 新赤版 1892)万葉集に出会う (岩波新書 新赤版 1892)感想
万葉集、ちゃんと読み仮名をふってくれればよかったのに、と思うが(ムリだって)、万が一ふってあったとしても時代とともに解釈は変わったんだろうな、という気がした。今年は短歌とか俳句の本ばかり読んでいるけれど、この本は何年か前に求めたものでいわゆる積読状態になっていた。過去の自分GJだ。
読了日:06月14日 著者:大谷 雅夫
カフカ断片集:海辺の貝殻のようにうつろで、ひと足でふみつぶされそうだ (新潮文庫 カ 1-5)カフカ断片集:海辺の貝殻のようにうつろで、ひと足でふみつぶされそうだ (新潮文庫 カ 1-5)感想
最後の1行でそこまで書いてきたことを否定するような書き方が多いなと感じる。こういうの、働きながら考えていたりしたのかな。勤務中に思いついて書き付けていたりしたんだろうか。そう考えるとそ知らぬ顔をしてノートになにやら書きとめるカフカの姿が脳裡に浮かぶ。読みながらツッコミを入れたくなってきたのでカバーをつけて大きめの付箋を貼ってそこにいろいろ書き込んでいる。多分読み返すたびに書き込みも増えるだろう。そんな楽しみもある本だと思う。
読了日:06月20日 著者:フランツ・カフカ
歳時記新註歳時記新註感想
こうして読んでみると歳時記というのは理科の授業で扱うものが大変多いことに気がつく。行事だってもとをたどれば季節の変わり目や何かに設定されていたりするわけだし、動植物は生物だろう。そういう目で季語を見直して俳句を作ってみたら類想から離れられるのではあるまいか。そんなかんたんなものでもないかな。
読了日:06月25日 著者:寺田 寅彦
和歌でない歌和歌でない歌感想
「我が歌は拙かれどもわれの歌」。昔の人、というか「歌よみに与ふる書」以前は日記の端にその日あったことからちょこっと一首書きつける人がいたというけれど、そういう感じの歌もあるのかな、と思ったりした。
読了日:06月30日 著者:中島 敦

読書メーター

Saturday, 01 June 2024

5月の読書メーター

5月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1258
ナイス数:31

俳句 (講談社学術文庫)俳句 (講談社学術文庫)感想
「ポエム」「ポエマー」が侮蔑的な意味で使われることがある、その理由がわかる。陳腐で手垢のついたような表現で書かれたものが「ポエム」、そうした表現を平気で使う人のことを「ポエマー」というのだろう。これは俳句や短歌も含めた詩に限ったことでもない気がする。ただ手紙などはそれでもいい時があって、というのは手紙というのは実用的な面が大きいものだからだ。この本の勧めに従って、具象性の高いことばを用い、奇を衒わず、見聞き体験したことから俳句を作れたら面白いだろうなあ。作るだけでなく句集を読むときにも役立ちそう。
読了日:05月03日 著者:阿部 ショウ人
真神/鷓鴣: 三橋敏雄句集 (邑書林句集文庫 M 3-1)真神/鷓鴣: 三橋敏雄句集 (邑書林句集文庫 M 3-1)感想
詩集(歌集・句集を含む)は、すてきな装丁の重厚な本もいいけれど常に持ち歩いていつでも好きな時に読むことのできる文庫型にも惹かれる。この本は後者で、手に入るのなら「かの狼」ではないけれど連れ歩くのになあ。
読了日:05月06日 著者:三橋 敏雄
推し短歌入門推し短歌入門感想
やっぱりこういうのって主人公(あるいは主人公にかなり近い立ち位置)の登場人物に感情移入するようでないと、つまりそういう人物を「推し」と認識するような人でないとむつかしいのかな、というのは初回に読んだときもちょっと思ったことである。確かに創作物の中で一番詳しく描かれるのは主人公かもしれないけれど(『SLAM DUNK』のように家族構成すらわからない主人公の例もあるけれど)、脇へ脇へと興味がいってしまう人間には推し短歌は無理なのかもしれないなあと、なんとなく思った。
読了日:05月07日 著者:榊原紘
短歌パラダイス: 歌合二十四番勝負 (岩波新書 新赤版 498)短歌パラダイス: 歌合二十四番勝負 (岩波新書 新赤版 498)感想
日本的な文芸は座や連衆による作成と評価があって成り立つという旨のことが書かれている。この「座や連衆」がいわゆる「船場のええし」と同義なのではと思うのは、文楽や歌舞伎にも同じようなことが云える気がするからだ。文楽や歌舞伎の場合は座や連衆は演じることはない(仲間内ではあるかもしれない)が、見たものを評価することで芸能が成り立っていたとは云えないだろうか。ただ「船場のええし」という自分の見方が正しいとしたら、いまは無理かなあ。無責任一代男の時代なら上役に取り入るにも小唄って世界だからありだったかもしれない。
読了日:05月18日 著者:小林 恭二
閑閑集 (双書現代女流短歌 3)閑閑集 (双書現代女流短歌 3)感想
なぜかどことなく谷山浩子の童話を題材にした歌を思い出すところがあって、「姫様」とかが出てくるからかなあ、それとも嫉ましさを詠った歌があるからだろうかなどと考えてしまう。短歌だけでなく随筆「東から吹く風の便り」もおもしろく「わさび(わびとさびが結合したの意)」な文章の風格を目指していたり、ひまを讃えたりしていい。さらにいえば坂田靖子の解説もいいし(どういう関係なのだろう?)、書きたくないのに書かされたあとがきの題名が「無念の木枯らし」というのもすばらしい。
読了日:05月20日 著者:紀野 恵

読書メーター

Thursday, 02 May 2024

4月の読書メーター

4月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:1953
ナイス数:43

源氏供養(上)-新版 (中公文庫 は 31-40)源氏供養(上)-新版 (中公文庫 は 31-40)感想
「紫式部も彰子(定子でもいいのかもしれないが)に「香炉峰の雪や如何に」とか訊いてもらいたかったんだなー」と思った。それが実現した時に清少納言と同じことをするかどうかはちょっと疑問だけど。「『源氏物語』は白黒のころのフランス映画で源氏はジェラール・フィリップ」というところにもうたまらなく橋本治を感じてしまう。新版に追加された座談会でさらに別の配役や少女まんがの主人公の名前が出てくるあたりも。『橋本治という立ち止まり方』に「私は、谷崎潤一郎と張り合いたかったのだ。(P22)」と書かれていたことも思い出す。
読了日:04月03日 著者:橋本 治
天才による凡人のための短歌教室天才による凡人のための短歌教室感想
本の整理をしていた時に思わず手にしてしまって再読。ここの感想にもあるけれど、多分、短歌だけでなくさまざまなことに応用が可能なのだと思う。「歌人を二人インストールする」にしたって、職場で一人の上司・先輩の背中だけを追うのは危険なのだ、みたような感じで。社内での立場の問題もあるけれど、仕事の仕方や専門分野など、「二人インストールする」のにもいろんなやり方が考えられる。新入社員を迎え、そんなことを考えてしまった。
読了日:04月03日 著者:木下 龍也
源実朝 (コレクション日本歌人選 51)源実朝 (コレクション日本歌人選 51)感想
歌人としての実朝については橋本治の『これで古典がよくわかる』の印象が強くてなかなか拭い去れずにいたものの、この本では歌にあることば通りに受け取る点が多く見られてとても参考になった。本歌取りは「オリジナリティがない」という人もいるけれど、そうではないということもこの解説からよくわかる。当時、家族に和歌の話ができる相手がいないというのがどういう意味を持っていたのかはわからない。いまなら家族とTV番組や映画、まんがや小説の趣味が合わないってつらいなって思うけれど。
読了日:04月04日 著者:三木 麻子
The Next Girl: A gripping crime thriller with a heart-stopping twist (Detective Gina Harte Book 1) (English Edition)The Next Girl: A gripping crime thriller with a heart-stopping twist (Detective Gina Harte Book 1) (English Edition)感想
故人となった夫からDVを受けていた捜査官と拉致監禁された被害者との相似がひとつ見所なのだと思う。捜査官には娘と孫がいて、娘との関係がうまくいっていない。被害者には幼い娘と息子がいて監禁されているから会えない。被害者の母親は孫の面倒をよく見る人で、そのようすを見て捜査官は自分の孫に思いを馳せる等々。起承転結の転のあたりにくると改行なしの長い段落が続くのがちょっとおもしろかった。ただ読んでいてあまり気持ちのいい話ではないので(出産後なんの処置もされずに放置されてたりとか)続きは読まないかな。
読了日:04月12日 著者:Carla Kovach
短歌をよむ (岩波新書 新赤版 304)短歌をよむ (岩波新書 新赤版 304)感想
俵万智の短歌を読むと破調でも読みやすく、角川春樹いうところの「作者の内在律」があると感じる。そのわけがわかった気がする。著者の心の声がストレートで、ときに関西弁の響きのあるところがおもしろい。「俵万智って、こんな人なんだな」と思う。題名の「よむ」がひらがななのは「読む」と「詠む」とにかけているからで、短い題名にもふた通りの意味を持たせるところなんか、歌人だなあ。ただ、短歌とか俳句もそうだが、もっと「他人からの共感なんてどーでもいいよ」という風にはならないのだろうか。そうなったらもう短歌ではないのかな。
読了日:04月13日 著者:俵 万智
百人一首がよくわかる百人一首がよくわかる感想
橋本治らしい身も蓋もない(好き)現代語訳の百人一首だ。手元に東直子の現代語訳もあって、比べてみると橋本治訳は身も蓋もないものの、案外東直子訳とそれほど違わない歌もあって、「この歌はこういう解釈ときまっているのだな」というのがよくわかる。他の方の感想にもあるように、二首ずつ対になっていて、定家の歌を選ぶ基準とその並べ方について言及しているのもおもしろかった。
読了日:04月16日 著者:橋本 治
トビウオが飛ぶとき 「舞いあがれ!」アンソロジートビウオが飛ぶとき 「舞いあがれ!」アンソロジー感想
朝の連続テレビ小説『舞いあがれ!』の登場人物たちが書いたという想定の短歌・詩のアンソロジー。秋月さんの歌が気に入った。フォントも秋月さんの歌に使われているものが一番好きだ。この人の歌をもっと読んでみたいと思うほど。でもそれは叶わないことなんだよなあ、という切なさも含めて好きな本だ。リュー北條の歌が掲載されているのも憎い。それぞれの登場人物らしい歌・詩が並び、俵万智が「現代の紫式部」と絶賛するのも宜なるかなと思う。
読了日:04月16日 著者:桑原 亮子
春日井建 (コレクション日本歌人選 73)春日井建 (コレクション日本歌人選 73)感想
俵万智の『短歌をよむ』に一度やめてまた歌をはじめた歌人の例の一人として名前があり、興味を持って読んだ。歌集『未成年』に取られた歌は確かにちょっとぎょっとするほど印象的で、それ故に続けていてもいずれこの形式からは離れ、また違った趣の歌を作るようになっていただろうことは想像がつく。短歌を読むっておもしろいな、刺激的だな、と思える一冊。コレクション日本歌人選からは『源実朝』につづいて2冊目。ほかの歌人の本も読みたい。
読了日:04月19日 著者:水原 紫苑
短歌パラダイス: 歌合二十四番勝負 (岩波新書 新赤版 498)短歌パラダイス: 歌合二十四番勝負 (岩波新書 新赤版 498)感想
句会でも思ったことに、日本にもディベイトのようなものはあったではないか、がある。歌合は団体戦なのでよりディベイトのように感じる。ディベイトのようなかっちりしたシステムはないけれど(順番とか持ち時間とか)、自分のチームの歌も相手のものも長所・短所を理解した上で議論するところはディベイトのようだと思った。歌合には判者が必要だから仲間内で行うのはむつかしそうだ。念人の議論はほかの歌集などを読むのにもとても役立つ。自作するならなおさらではないだろうか。手元にほしい本だが残念ながら見つけられず図書館で借りた。
読了日:04月21日 著者:小林 恭二

読書メーター

Monday, 01 April 2024

3月の読書メーター

3月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2146
ナイス数:38

冬の旅、夏の夢: 高山れおな句集冬の旅、夏の夢: 高山れおな句集感想
断片的に読んだことのある作者の句とはどことなく趣の違う句が並んでいる気がする。断片的に、というのは句集が手に入らないからで、この本も市内の図書館の中からやっと見つけた一冊だ。違う気がするのは後記にあるように若い頃の主義原則が変わってきているからなのかもしれない。とはいえ、なにしろ「ぞけさ」の人だからなあ。ものすごく読み落としてるのかも。というわけで、返却する前に読み返すつもり。
読了日:03月05日 著者:高山 れおな
言語ゲームの練習問題 (講談社現代新書)言語ゲームの練習問題 (講談社現代新書)感想
「逆スペクトルの懐疑」っていうのか。子供の頃母親に「私がお母さんの中に入ってものを見たら赤が青だったりするかも」というようなことを子供の語彙ながら一生懸命伝えようとしたら、「妙なこと云わないで!」とひどく怒られた。あの時おそらく母は何か自分の足元が不安定になるような気がしたのではなかったろうか。いずれにせよあの場で「うーん、むつかしい問題ねえ」などと受け入れられていたら今頃は「こんな先生に教わりたい」と思っていたかもしれないなあ。怒られたショックでそういうことは口にしない人間に育ってしまった。
読了日:03月08日 著者:橋爪 大三郎
微苦笑俳句コレクション微苦笑俳句コレクション感想
俳人の句から一般人の句まで著者がこれと思った句を引いてきているのがおもしろい。この本と並行して正統派の俳句アンソロジーのようなものを読んでいるのだが、客観写生は正統派のみのものにあらずだなあ、とも思う。ただ、著者の読みはいまの社会ではチト受け入れられないと思われるものが多い。三十年はたってるからなあ。それでも著者は折に触れ「こんなことを書いたら世の女の人に怒られる」という旨のことを書いているのだが。白石冬美や冨士眞奈美、岸田今日子に山藤章二といった面々の句があったのは嬉しかった。
読了日:03月13日 著者:江國 滋
ホトトギスの俳人101 (ハンドブック・シリーズ)ホトトギスの俳人101 (ハンドブック・シリーズ)感想
客観写生に興味があって読み始めたのだが、俳句とは直接関係のない点が気になってしまった。たとえば血縁者や姻戚関係にある俳人が多いとか、朝日俳壇の選句者の座さえも一族で継承しているとか。そう思うと各俳人を紹介する文章も内輪受けなのではと思えてくる。結社とはそういうものなのかもしれないし、家元制度といえばそうなのだが、昨今の国政のようすなどを見ているとちょっと、ね。もちろん、素晴らしい句を作る人が取り上げられているのだろうとは思うけれど。長寿の人が多い気がする。番外で初代吉右衛門がいるのが個人的に気に入った。
読了日:03月15日 著者:
俳句という愉しみ: 句会の醍醐味 (岩波新書 新赤版 379)俳句という愉しみ: 句会の醍醐味 (岩波新書 新赤版 379)感想
この句会には碁の局後の検討や将棋の感想戦に近いものを感じた。実際はともかく勝敗に感情を交えない。今だったら書きづらいだろう「女流の台頭による句や歌の質の低下」の話も興味深い。ただ著者の訴える俳句のよさ、師系の大切さを読んでいると「俳句は忘れられるのでは?」と不安になる。季語には歴史上の名句の余韻がすべて含まれるというが、ならば季語は忠臣蔵と同じ運命をたどるのではないだろうか。誰もが知っていることを前提とした芸術は通用しなくなる、しても極々限られた人数のみの愉しみになるのではないかと思うのだがどうだろうか。
読了日:03月18日 著者:小林 恭二
孤独の俳句: 「山頭火と放哉」名句110選 (小学館新書 431)孤独の俳句: 「山頭火と放哉」名句110選 (小学館新書 431)感想
山頭火と放哉との違いが明確に見えるすてきな一冊。ただ、俳句の鑑賞には作者の生い立ちを知らねばならないというようなところはどうなのかなあ。俳句の鑑賞とはそういうものということになっていることは知ってはいるけれど、俳句が苦手だと思う点のひとつではある。はじめて小説とか詩でもいい、読むときって作者のこととか知らないことの方が多いんじゃあるまいか。だんだんに知っていけばいいのかもしれないけれど、なんだかひっかかる。
読了日:03月24日 著者:金子 兜太,又吉 直樹
コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアルコンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル感想
ストーリー仕立てで読みやすい。残業・休出三昧の仕事をしてきた読者の中には共感を覚える人も多いだろう。ただなぜ「マニュアル」としてしまったのか、そこは疑問だ。マニュアルとは手引きまたは説明書のようなものだろう。わからないことがあったら引いて見るような書籍を想像する。これはそうした本ではない。薄い緑色のページがマニュアルっぽいといえばそうだが、著者が訴えたいのはそうしたことではないだろう。著者が訴えたいことは「狂気」なのではないか。「それは違うよ」と云われそうだが、世界を変えるには狂気が必要な気がする。
読了日:03月27日 著者:メン獄
TED Talks: The official TED guide to public speaking: Tips and tricks for giving unforgettable speeches and presentationsTED Talks: The official TED guide to public speaking: Tips and tricks for giving unforgettable speeches and presentations感想
知識(knowledge)ではなく理解(understanding)を伝えようだなんてちっとも覚えていなかった。再読はするものだ。例えば惑星運行について知りたいと思ったとき、全惑星の運行を覚えるのが知識、惑星運行のメカニズムを知り各惑星の運行がわかるようになるのが理解といったところか。仕事で提案のプレゼンテーションの時にも使える気がするし、普段の自分の勉強(というほどのことはしていないのだが)にも役立つんじゃあるまいか。読み返しながら好きなスピーチの動画を見返したりもした。世界はなかなか変わらないね。
読了日:03月30日 著者:Chris Anderson
俳句という遊び: 句会の空間 (岩波新書 新赤版 169)俳句という遊び: 句会の空間 (岩波新書 新赤版 169)感想
こういう句会ばかりだったらなあと思うが、それには参加する本人の資質も問われるわけで難しい。本の中でも一般的な「句会」については二種類あると説明していて、そういう句会って発展性があるのかとかよりよい句を作るためになるんだろうかと疑問だったのが少し晴れた気がした。ただ、その場にいる人と意見が対立してもそれはそれ、という経験を重ねるのには句会はいいんじゃあるまいか。先に続篇を読んでしまったので「こちらを先に読むんだったなあ」と思うことしきりだったがこれは仕方がない。
読了日:03月31日 著者:小林 恭二

読書メーター

Friday, 01 March 2024

2月の読書メーター

2月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2108
ナイス数:57

コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト 知らないと一生後悔する99のスキルと5の挑戦コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト 知らないと一生後悔する99のスキルと5の挑戦感想
久しぶりに「編集者、仕事した? それとも著者が編集者の云うことを聞かなかった?」と思ってしまった本だった。たとえば箇条書きのよさを訴える部分ではレイアウトの関係で箇条書きが見づらいものになっていたり、誤字脱字チェックの重要さを訴えていながら重要なところに脱字があったり。そうしたところが気になると普段は気にならない表記の不統一なんかも気になり始めて、ちょっと失敗したなという感じ。題名のラノベのようなところや喋るようなことばで書いていることを考えたらもっと肩から力を抜いて読むべきだったな。反省。
読了日:02月02日 著者:高松 智史
角川俳句ライブラリー この俳句がスゴい!角川俳句ライブラリー この俳句がスゴい!感想
どの句も頭に入ってくる感じの解説で、名句集は苦手だと思っていたけれど認識を改めた。著者の父親も俳句に親しんでいたのかなと思わせる内容があって、波郷のある句は予備知識があればわかる、そしてその予備知識はなにも俳人の生い立ちだとか性格だとかではない、というのがおもしろかった。続篇もあるようだし、この本もまた読み返してみたい。
読了日:02月03日 著者:小林 恭二
新書570 生きるのが面倒くさい人 (朝日新書)新書570 生きるのが面倒くさい人 (朝日新書)感想
こういう本にはきまって「うまくいった例」が出て来てそれも複数あるのだが、ほんとうの話なのだろうか。この本に書かれているような症状(というのか)のある人を安心させるためのでっち上げなのじゃあるまいか。だって小さい一歩とかいくらも踏み出してきたもん。でもなにも変わらない。何が違うんだろう。
再読だった。読書メーターをはじめる前に読んでいたものらしい。
読了日:02月09日 著者:岡田尊司
地獄の楽しみ方 17歳の特別教室地獄の楽しみ方 17歳の特別教室感想
いまある自分の姿は「親のせいでも、環境のせいでも、学校のせいでもない」(p68)。厳しいな。百鬼夜行シリーズも厳しいもんな。面白くないものを面白がるのには自分も経験があって、高校生の頃コードウェイナー・スミスを読んでも全然ピンとこなかったのに就職してから手に取ってみたらなんだかものすごく面白かった。ただそうなると何が面白くなかったのかわからない。ちょっともったいないことをしたなと思った。全体的には語彙を増やして自分には厳しくあれ、というところか。
読了日:02月12日 著者:京極 夏彦
かわいいピンクの竜になるかわいいピンクの竜になる感想
ある対象(人であるとないとにかかわらず)を美しい、かわいいと思うことは搾取なのか。なにかを「かわいい」と感じたときに同時に覚えるかすかなためらいはそのせいなのか。考えずにはいられない。衣装を纏うこと・化粧をすることの意味も。ジェンダーの問題なども普段もやもや感じていることがことばにされていて、参考になった。まんがなどにはあまり興味がないようで、「『トーマの心臓』は読んだことないのかな?」と思うようなところがあったのも趣深い。
読了日:02月12日 著者:川野芽生
碁の句―ー春夏秋冬ー碁の句―ー春夏秋冬ー感想
最近の俳人は碁の句は作らないんだなというのが最初の感想。そこで矢野玲奈を知ることができたのは収穫の一つ。江戸時代から昭和に作られた句が多い。俳句だけでなく、連歌の中の句や川柳も引いている。解説にはたびたび『源氏物語』の「空蝉」の対局の話が出てくる。そういう「みんな知ってるよね」的な句が多いから近頃は碁の句はあまりないのかな。俳句を始めて四ヶ月、自分の参加している句会では碁や将棋の句はあまり理解してもらえないなあという気がしていたが、気のせいではなかったようだ。休刊してしまった週刊碁で連載されていたという。
読了日:02月18日 著者:秋山賢司
散歩が楽しくなる 俳句手帳散歩が楽しくなる 俳句手帳感想
コロナ禍で吟行がしにくくなった。夏井いつきが「おうちde俳句」を打ち出す一方(足弱さん向きでもあるよね)、堀本裕樹は「近所の散歩もいいじゃないか」と書いている。この判型・製本は「俳句手帳」と銘打っているからだろう。最初は「なぜ俳句手帳を?」と疑問だったが、自作の句を書き込む手帳ではなくて書籍だったのか、と本屋で思った。
読了日:02月22日 著者:堀本 裕樹
自殺帳自殺帳感想
自ら命を絶つ理由は本人にもよくわからないのかもしれない。フロイトの学説は反証不可能と槍玉に挙げられることがあって、それはその通りながら人の気持ちというのは本人が「こうなんだ」と思えばそれが正解な気もするのでそういうものなのだろうと思うけれど、結局本人にもわからないんだろうな、とか。『白昼の死角』は映画は見たけど小説は読んだことがない。光クラブの本と合わせて読んでみたらおもしろいだろうか。昆虫の苦手な人は要注意。
読了日:02月25日 著者:春日武彦

読書メーター

Friday, 02 February 2024

1月の読書メーター

1月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2190
ナイス数:74

思考の整理学 (ちくま文庫)思考の整理学 (ちくま文庫)感想
メモを取りながら聞くよりもただ聞くことに専念した方がいいというのはその通りだが、ある程度知識を持っていることに限るようにも思う。わからないと思うとそこでつかえてしまうからだ。メモ術・ノート術の類は人によって向き不向きがあるというのもその通りだなあと思いつつ読んだけれど、いわゆるノート術をあまり快く思っていないのかなという記述も見て取れる。自分にあった方法を見つけるところから思考の整理が始まるのかもしれない。長年積読状態にしてあったが、この年末年始、書き込みなどしつつ布団の中で読んだ。
読了日:01月03日 著者:外山 滋比古
父のこと (中公文庫)父のこと (中公文庫)感想
たまに吉田健一が読みたくなる。だがこの本はそういう本ではない。対談部分が多いからということもあるけれど、吉田健一調の文体は影を潜めている。そこがまたおもしろい。吉田茂にしても吉田健一しても、幼い頃から実家から養家へとうつり(健一は祖父母宅ではあるが)さらにまた移動したりしている。明治の元勲には同様の人が多かった印象があるのだが(調査はしていない)、そうした流れの最後の人々なのかなあ。これもちょっとおもしろいと思う。共産主義と民主主義は対立する概念じゃないぞと思いつつ、ジーヴス好きって趣味がいい。
読了日:01月07日 著者:吉田 健一
ロゴスと巻貝ロゴスと巻貝感想
詩(和歌・短歌や俳句も含む)って、暗唱してはじめて血肉になるものなんだな。それを詰込学習としかとらえられない向きがいるのは仕方がないとして、ググればわかる当節だけど、自分の中にあるのとないのとでは大違いなんだろう。自分は記憶している詩などほとんどないから実際にはどうなのかわからないけれど、この本を読んでそう思った。エッセイもいいけれど、新しい句集が出ないかなあと待っている。
読了日:01月13日 著者:小津夜景
夜と霧 新版夜と霧 新版感想
イーディス・ボーンがなぜいつ終わるとも知れぬ監禁に耐えられたのか、不思議に思っていた。病院に行っていつ自分の番が来るかわからない不安に悩まされる自分には到底わからないことだと思っていた。その答えがここにある。自分は物理的には囚われの身でもないのに生きていないも同然なのだということも知った。
読了日:01月14日 著者:ヴィクトール・E・フランクル
東京マッハ 俳句を選んで、推して、語り合う東京マッハ 俳句を選んで、推して、語り合う感想
「え、句会ってこんなにおもしろいものだったんだ?」というのが東京マッハを知っての感想だった。つねづね「全員が全長52メートル」から「夕焼けを食べて吐き出す大伽藍」になるの、すごいなと思っているんだけど、こうして時系列に並べられると実感が深まる。チケット買った回だとその場の雰囲気のようなものは感じられないなと思うものの、却って冷静に読めていい気もする。句会、やってみたいんですよ。作らない句会(それは千野帽子の本の方か)。いつかできるかなあ。
読了日:01月21日 著者:東京マッハ,千野帽子,長嶋有,堀本裕樹,米光一成
カブキの日 (新潮文庫)カブキの日 (新潮文庫)感想
歌舞伎とカブキとは違うものながらつかずはなれずの関係でそこがまず気に入った。死んだ坂東三津五郎が八十助のころ「喫茶店に行くとお客さんがみな今月の芝居について話している、そんな風になるといい」という旨のことを語っていたことがあって、この小説世界ではそれが現実なんだろう。その熱さ・圧がないと起こりえない話でもある。穂村弘がNHKアカデミアで著者と話したと云っていたのがきっかけで手にとった本で、「カブキの本義」と穂村弘のいう「歌人の読み」につながる部分があるのも面白かった。
読了日:01月27日 著者:小林 恭二
歌舞伎通歌舞伎通感想
芝居のあらすじの書き方が実に簡明で、「ここまで略していいんだ!」と思うことしばしば。自分だったら「ここは実はこうなんだけど」と余計なことまで話してしまうところだ。俳句に通じているからということもあるのかなあ。勘九郎時代の十八代目中村勘三郎の芝居を追いかけている感じで、勘九郎との対談を読んでいると本人の話しているようすがありありと脳裡に浮かぶ。舞台役者は大別して内面派と外面派がいると喝破する点などはなつかしの名優の中に先代の雀右衛門がいないのでなるほどと思わせる部分も。でも宗十郎はいる。嬉しい。
読了日:01月28日 著者:小林 恭二
新釈四谷怪談 (集英社新書)新釈四谷怪談 (集英社新書)感想
四谷怪談について書いたのは、おそらく見たからだろう。芝居を見て書きたくなったのに違いない。そんな気がする。江戸のことばができたのが化政のころとあって、それで南北のセリフはむつかしいのかなと思った。四谷怪談に興味があるというよりは著者の書くものを読みたかったから読んだので、その点では満足な内容だった。それにしても南北の作品を何点かあげておきながら、なぜ『謎帯一寸徳兵衛』については言及していないのか。著者であれば段四郎か孝夫時代の仁左衛門で見ていても不思議ではない気がするが、見てない可能性も高いか。
読了日:01月31日 著者:小林 恭二

読書メーター

«12月の読書メーター